* 修了生からのメッセージ(教育学研究科修士課程 修了生)

*手紙と写真の掲載については本人の了解を得ています。
The letter and the picture are used with the permission of the graduate.

ペン センエン

(教育学研究科社会科教育コース, 2001年修了生)

ペン センエン
 2001年に教育学研究科社会科教育コースを修了した中国出身の彭 程遠(ペン センエン)と申します。社会人になってからもう5年目になりました。最近友人との会話の中、よく学生の頃は…、日本に来た頃は…と懐かしい話をするようになりましたが、ふっと考えたら来日してからもう10年以上経ちました。

 日本での長い生活の中、東京学芸大学で学んだことは私の知識の宝箱の中の最も貴重なアクセサリーになっています。今も私の社会人生活に大きく影響を与えていますので、ぜひ在学中のみなさんに、教育について学ぶことの重要性をお伝えしたいと思います。

 私は現在臨床検査会社の海外治験部で働いています。仕事は海外治験コーディネータとしてグロバール治験を実施する際、検査ラボのコーディネータの仕事をしています。業種と職種についてここで簡単に説明したいと思います。

 治験についてみなさんは聞いたことがあるかと思いますが、製薬会社及び医療機器会社が商品を販売する前にその安全性を確認するために治験を実施します。私が勤めている部署は顧客から依頼を受け、薬品、医療機器の対人への安全性を測定する治験部です。治験は長い年月をかけて実施するものなので(5~7年)、治験をスムーズに運用するために担当コーディネータを設置することになっています。私が担当しているのはグロバール治験です。つまり全世界で同時実施する治験の際、日本側の運用担当者になります。国内治験と違うのは同じプロトコール(試験計画書)を使って全世界で運用することになると、語学力が大変重要となっています。

 プロトコール(治験計画書)を理解できなければ正しい指示もできないので、治験の実施に大きな障害となってしまいます。私は学生時代から英語好きでしたので、会社にグロバールの仕事を任され、大変充実な日々を送っています。治験コーディネータの仕事をするようになってから、大学院での学習経験が力になっていることを実感しました。

 教育修士出身の私がなぜ臨床検査会社に勤めているのか、しかも専門知識が求められている治験実施分野で仕事をしているのかと皆によく聞かれます。なぜなら、今の仕事は一見私の教育バックグランドの必要がないような業種にみえるのです。しかし、みなさんはこれから社会人になれば分かってくるかと思いますが、仕事の世界はコミュニケーションが欠かせない、人と人が強く繋いでいる世界です。つまり、今自分がしたいこと、他人にしてほしいことをうまく伝えないと仕事が回らないのです。しかも難しい仕事でも分かりやすく人に説明しないといけないので、学校で学んだ子供たちに対す教育方法を学んだことが今の仕事に生かしています。

 皆さんは今、学校の授業計画を作る時、教えたい内容を事前にまとめ、授業の導入、展開の部分、結論の部分を細かく内容、時間に分けて、授業の実施計画を立てていきます。そこで単なる内容を教えても面白くないので、例や例え話を使って子供たちの関心を持たせながら教えていきます。また常に子供たちのことを考えて授業計画を立てていると思います。仕事も同じです。上司、部下、他部署もしくはお客様にしてほしいことがあれば、うまく説明して相手を納得させる必要があります。私は大きな仕事もしくはプレゼンする前に必ずノートに授業計画(説明計画)を立てて、説明のストーリを描いています。もちろんその通りに行くとは限りませんが、大枠が出来ていれば話はスムーズにいきます。聞く相手にも自分の真剣さが伝わります。

 また、学校で学んだリサーチ能力も大きく役に立っています。商品もしくは顧客に対するサービスは今より少しでもよくなるため、独自に研究、調査をし、商品改善、サービスの向上を図ります。そういうことをしているうちに仕事が楽しくなりました。

 これからみなさんは社会人になり、学校の先生になる人もいれば、会社員になる人もいますが、学校で学んだことはこれからの10年、20年、30年・・・・・長く影響を与え続けます。ぜひこの貴重の学習時間を大切にし、貪欲に知識を吸収してください。

 最後となりますが、皆さんのご健闘とご活躍を心から祈っております。