留学生が見たモノ・コト

日本に来て思うこと(グエン・チャン・ティ) [ベトナム]

 ベトナムから日本に来て、ちょうど4ヶ月経った。この3年間日本語を専攻して勉強してきた私は、日本に来るのをどんなに楽みにしていたことか。しかし、日本に来てから、心の奥で悩むようなことも出てきた。なぜなら、これは初めての海外留学である。そして、家族から離れたのも初めてである。
 外国語を専攻するということは、その外国語の勉強ばかりではなく、その国の文化も身につけることが必要だとベトナムでは考えられている。かなり日本文化は知っているという自信がある。それに、たった一年だけの留学だから、心配することはないと思っていた。しかし、日本に来てから、驚くことや予想外のことがたくさんあったのである。
 一番驚いたのは道がわからない時でも、道に迷った時でも、歩いている人に聞くより地図などでちゃんと調べたり交番に尋ねたりすることである。この間も立川入管に行った時、立川駅を降りて、どこへ行けばいいのかわからず、周りの人に聞いたら交番を教えてくれた。交番ではお巡りさんが「12番北町行きのバスに乗りなさい」と教えてくれた。ベトナムでは近くの人に道を尋ねると、すぐ教えてくれるので、交番まで行くことはない。そんなにたくさんの交番もない。
それから、一番がっかりしたのは、声をかけた時に日本人に聞こえないふりをされて行かれてしまったことである。日本に来た初日、ホームシックになって韓国の友達と一緒に散歩した。途中で寮に帰ろうと思ったら、道に迷ってしまったことに気づいた。「まだ道はちゃんと覚えてないのに、出かけるなんて、本当に馬鹿だ。どうしよう。」と自分を責めた。誰かが助けてくれるのではないかと思って、心細い気持ちで「あの、すみません。。。」と歩いていた日本人に話しかけた。聞えたのか聞えなかったのか、返事をしてくれない人もいた。幸いなことに、その時はとても親切なおじいさんが寮まで案内してくれた。その後、一瞬であったが、「日本人の中にはあまり他の人にかかわりたくない人もいるんだ」と思った。
 また、急いで道を歩いている日本人の姿は、まるで何かに追われているようだと感じた。今一人暮らしで、家族と離れているせいか、なんとなく自分がその忙しそうな人込みの中で場違いだと感じることもある。
 それに、日本の一番活気のある都市東京に住んで、あちらこちらどちらを見てもそびえる高層ビルに囲まれ、なんだか自分が小さい人間のように感じることもしばしばである。
最近気付いたことであるが、ベトナムはバイクや車のクラクションでいつもうるさい。日本では道を歩いていてもクラクションの音はあまり聞こえない。今はうるさいベトナムの町が懐かしく感じる。マスクをしてバイクに乗るベトナム人の姿や、バスに急いで乗る学生の姿や、ラッシュアワーで道が込んでいる時にならされる長く大きいクラクションに文句を言うベトナム人の姿が懐かしいのである。まだ発展していなくても、道はわずらわしくても、ベトナムに帰りたいのである。
 まだまだ電車や道など、日本の生活に慣れていない。それでも、これからの8ヶ月日本にいるうちに、きっと少しずつその困難を乗り越えて、その人込みの中で胸を張って歩いていけるよう、頑張っていくと思う。