児童の日常的生活環境と
身近な小動物に関する概念形成について

○三瀬 一也 本村 輝美 平田 昭雄
MISE,Kazuya MOTOMURA,Terumi HIRATA,Akio

東京学芸大学教育学部

キーワード:小学生,概念形成,自然環境,実体験,素朴概念.

1.はじめに

これまでの取り組みで筆者らは,自然環境の異なる3地域(大都市近郊の住宅密集地域,地方都市の市街化地域,田畑や山林の多い農山村地域)において小学生の昆虫等の陸生小動物に関する概念形成についての実態調査を実施して,Formal-concept, Informal-concept のいずれについても地域間における差異は殆ど存在しないことを確認している.本研究では,こうしたことが魚類に代表される水生小動物に関する小学生の概念形成にも一般化されうるかについて検討することを目的に,新たにG地域:海に囲まれた諸島地域(長崎県五島列島)とY地域:海に面してはいないが比較的近い地域(愛媛県南予)の小学校第5学年児童計273名を対象とした質問紙法による実態調査を実施した.ここでは,この結果の概要を報告する.

2.海洋小動物との日常的な関わり

−イワシについての実体験を指標として−

被験児童たちのイワシとの関わりについて,「釣ったことがある」「海で見たことがある」「魚屋等で見たことがある」「見たことがない」の4選択肢を用意して尋ねたところ,「海で見たことがある」という経験についてのみ2地域間に差異が認められ(G地域:41.7%,Y地域:31.6%),他の選択肢については差異は認められなかった.

3.魚類の形態に関する概念形成

−マイワシの鰭の付き方を例として−

次に,被験児童に鰭(ひれ)を消去したマイワシの絵を与え,これに各部の鰭を記入させ,これらの回答を,
A:背鰭+胸鰭+腹鰭+尻鰭+尾鰭(正答),
B:背鰭+胸鰭+腹鰭+尾鰭,
C:背鰭+腹鰭+尾鰭,
D:背鰭+胸鰭+尾鰭,
E:胸鰭+尾鰭,
のパタンに分類して集計したところ,正答Aに対して尻鰭を欠いたBに属する回答が最も多く,G,Y両地域ともに3割以上を占めていた.因みに他の4者に属する回答を示した児童はいずれも1割前後と少なかった.

4.おわりに

本稿では紙面の制約もあり,調査結果の概要のごく一部を示すにとどめざるをえなかった.集計処理から導かれた各種の具体的数値や,そこから展開された諸々の考察については,当日,発表の場において併せて報告することにしたい.

<文 献>
三瀬・高根沢・杉山・平田(1998):「小学校第5学年児童の昆虫等に関する素朴概念」,日本理科教育学会第48回全国大会要項,p.188.
高根沢・杉山・平田(1997):「昆虫に関する児童の実体験と概念形成について」,日本理科教育学会第36回関東支部大会研究発表要旨集,p.45.