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水圏生物学 (2006年度後期)
○担当教員: 真山 茂樹 (自然科学系 広域自然科学講座 生命科学分野 准教授) 研究室HP
○曜日時限: 金曜 4限 / ○教室: S棟 205教室 / ○学年: 3年生
 ねらいと目標

 地球表面の7割は水である。水圏の生物を学ぶことで生物の進化や多様性の根源を知り、理解することができる。そして、それらの生物が環境に対し、どのような関わりを持つのかを知ることにより、生物の生存戦略の一端を知ることができる。さらに、その生物を通して、人間と環境の関わり合いを考え、持続可能な社会を考えることを目的とする。


 内容

 授業前半では水圏生物(主に進化・多様性の原点である原生生物)についての基礎情報を扱い、中間では外部講師による河川の水質環境および河川の自然環境と保全の講義を行う。さらに、後半ではシミュレーターを利用し生物と環境の関係を仮想体験し、その後、実際に多摩川で生物を採集し、顕微鏡観察を行い水圏生物を媒介とし人間生活と河川環境について考える。なお、本授業は文部科学省の「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」に採択された、「持続可能な社会づくりのための環境学習活動〜多摩川バイオリージョンにおけるエコミュージアムの展開〜」の関連授業である。


 参考文献

● 藻類30億年の自然史 井上勲著 東海大出版会


 授業スケジュール

1. 10/20 水圏に棲む生物の概要

2. 10/27 ミクロレベルの生物の多様性

3. 11/10 明らかになってきた微小生物の系統

4. 11/17 水圏生態系の主要な生産者珪藻 (1)

5. 11/24 水圏生態系の主要な生産者珪藻 (2)

6. 12/1 水圏環境指標生物

7. 12/8 過去〜現在へ河川環境の変遷(外部講師:東京都環境局・中村眞一氏)

8. 12/15 河川の自然とその保全(外部講師:東京大学・清野聡子氏)

9. 12/16(土) 9:00〜12:00 SimRiverを用いたシミュレーション実習

10. 12/17(日)10:00〜12:00 多摩川で珪藻採集と水質検査

11. 12/17(日)13:00〜17:40 顕微鏡観察による水質判定と討論


 授業報告

【授業概要】
 前半の5時間で、なぜ水圏生物を学ぶのか、その重要性を語るとともに、水圏生物の多様性を概説した。また、近年明らかになってきた水圏生物の系統進化について説明を行った。さらに、水圏生態系の主要な生産者である珪藻について、生物学的な基礎情報と、人間生活への応用について解説した。授業はコンピュータ教室で行い、写真、ビデオ、インターネットを活用し、ビジュアルな講義を行った。

 授業時間の真ん中で2時間、外部講師による講義を行った。一人は河川生物研究家である平井正風氏ある。氏はさまざまな河川現場に詳しいステークホルダーで、水の循環、河川の水質、そして野川の生物について解説をしていただいた。もう一人は生態環境や保全工学を専門とする東京大学の清野聡子氏で、河川と人間とのかかわりについて、公害と水管理の観点から、歴史を踏まえた話をしていただいた。

 後半8時間は2回にわたり集中形式の実習授業を行った。最初は担当者が開発した、人間生活と河川水質との関係を珪藻から学ぶシミュレーションソフト"SimRiver"を用いた実習を半日行った。あらかじめ各自のノートパソコンにインストールしたSimRiverを用い、受講生は、土地利用条件、人口、下水処理場など、さまざまな要因に基づく河川流域環境を作り、その時の河川水質がどのように変化するかを、合成表示される珪藻群集から学ぶことができた。最後は丸1日を使い、多摩川(府中市)での珪藻採集と実験室での実習を行った。多摩川では川の中に沈んだ石の表面から珪藻を採集すると共に、石に付着する無脊椎底生動物の観察を行った。また、多摩川の水の由来などの講義を河原で聴いた。その後、大学へ戻り、生物学実験室にて採集した珪藻の処理を行った。処理後、プレパラートを作成し、顕微鏡観察により珪藻の種同定と計数を行い、多摩川の水質判定を行った。さらに、24年前に同所で採集された珪藻プレパラートの観察を行い、現在と24年前の多摩川の水質の比較を行った。その後、当時と現在の生活環境違いに基づく討論を行った。

【受講学生の学びについて】
 本授業で受講生は、座学による知識の受け取りだけでなく、実際に自分の目で多摩川を見、水と珪藻を手で触り、川と試料の臭いを嗅ぎ、水質判定のため顕微鏡観察を行った。また、シミュレーションでは自ら環境の作成と評価をおこなった。さらに外部講師による現場からの生の声を聞くことができた。期末に提出されたレポートの分析では、これらの理由により、彼らが河川生物と河川環境に強く興味を抱き、自主的に資料を調べていた。また、授業時間外にもシュミレートを行い、環境と珪藻の関係をさまざまな観点から学んでいたのが印象的であった。総じて、彼らの水圏生物と水環境に対する意識は、授業前と比べ格段に向上したものと判断された。

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