関連科目「ビオトープと生物資源保全実習」(2006年度前期、学部環境教育専攻2年必修科目)
担当教員:木俣美樹男(環境教育実践施設)/ 曜日時限:月曜3・4限/ 教室:環境教育実践施設多目的教室、教材植物園および山梨県小菅村「植物と人々の博物館連携推進室」/巡検地:神代植物公園、深大寺から野川公園まで(1日)および山梨県小菅村(1泊2日)
ねらいと目標: 生物文化多様性を中心概念とした生物資源の保全技術や方法として、学校園・植物園造り、そのビオトープ化、植物遺伝資源および伝統的植物智の収集・保存、さく葉標本の製作・管理、民具の整理、データベースの作成、博物館展示法などを習得する。この成果を、エコミュージアム日本村「植物と人々の博物館」づくりの基礎資料として蓄積する。
内容: 1)環境教育学の基礎科目としての民族植物学、生物多様性条約、種子銀行などについて概説。2)環境教育実践施設の教材植物園(彩色園)を生物文化多様性保全のための実習地として長期的に維持管理、ビオトープ化する実習として、農林業用具の使用法、育苗から栽培、二次林の間伐を行った。3)植物の分類、同定、さく葉標本の作製とデータベース作り。4)神代植物公園の野外展示、造園、深大寺の景観と門前蕎麦屋、調布市水車小屋、野川の景観、野川公園自然観察センターを観察巡検した。5)山梨県小菅村において山村生活に関わる伝統的植物智および民具の収集、保存、評価、管理を学ぶために、農林家で有用植物についての聞き取り調査、雑穀在来品種実験栽培地の観察、「植物と人々の博物館」(中央公民館内)の民具整理を行った。6)各グループの実習成果はパワーポイントにまとめて全体報告会を行った。
効果: 環境教育学を専攻する学生たちにとって、多摩川源流の小菅村、その支流野川の小金井市、調布市、三鷹市を巡検地としたことによって山村と中流域都市の暮らしを比較する視点ができた。多摩川の2地域をつないで、エコミュージアムをネットワークする見方、コアミュージアム「植物と人々の博物館」づくりの概要、これらを基礎付ける資料作りの方法が総合的に学べたと思われる。小菅村の文化財審議委員や訪問農林家から、学生たちが小菅村の民具を整理し、伝統的植物智を学ぶ姿勢に感謝と賛同を得たことは、学生たちにも学習活動の意義について自信を与えた。
関連科目「学校園の活用と計画」(2006年度前期、学部共通科目)
担当教員:木俣美樹男(環境教育実践施設)/ 曜日時限:木曜2限/ 教室:C301、環境教育実践施設教材植物園および大学キャンパス/巡検地:附属小金井小学校
ねらいと目標: 生物文化多様性を保全することを配慮した学校園造りとビオトープ化について学ぶ。このための基礎技術として植物栽培と造園の基本を習得する。小学校および大学キャンパスを観察し、広義の学校園が学びの場の環境要素としていかに必要かを考える。この成果を踏まえ、ワークショップの手法でグループごとに議論を深めながら、望ましい学校園をデザインし、全体に発表することによって、個人とグループの考えをまとめて表現し、伝えるトレーニングをする。
内容: 1)良好な教育環境を与える学校園と通学圏エコミュージアムについて概説。2)環境教育実践施設の教材植物園(彩色園)を生物文化多様性保全のための実習地として長期的に維持管理、ビオトープ化する実習として、農林業用具の使用法を学び、育苗から菜園と花壇づくりまでを行った。3)大学キャンパスおよび附属小金井小学校を観察巡検した。4)6グループ(各20~30名)に分かれて、望ましい学校園のデザインを議論し、そのつど全体に発表し、最終的にパワーポイントにまとめて報告しあった。
効果: 小中学校の教員を目指す学生たちにとって、広義の学校園が良好な教育環境をつくるという視点ができた。野外実習によって園芸実技の基礎を学び、小学校にある実際の学校園を観察し、グループごとに望ましい学校園をデザインする議論をし、繰り返して全体に発表した。この成果は、学校現場の学校園の意義を理解し、個人のアイディアを生かしながらグループの企画にまとめるトレーニングになり、通学圏エコミュージアムのコアミュージアムとして学校・学校園が地域の環境保全・創造のためにも重要な位置にあることが理解できたと思われる。
関連科目「環境学特論」(2006年度前期、大学院専門選択科目)
担当教員:木俣美樹男(環境教育実践施設)/ 曜日時限:水曜6限/ 教室:環境教育実践施設会議室/巡検地:小金井市立第四小学校校区
ねらいと目標: 環境に対する意識調査の手法として、アンソロパックを検討し、調査法のいくつかを習得する。小金井市第四小学校校区を調査し、通学圏エコミュージアムを検討、構想する。この事例に基づいて、環境を学ぶとは何かを議論する。総合学習の時間の環境教材に使用してもらえるように提案する。
内容: 1)アンソロパックほかで提案されている、フリーリスティング、パイルソーティング、マッピングの意識調査手法を検討して、習得する。2)良好な教育環境を与える学校園と通学圏エコミュージアムについて概説。3)小金井第四小学校校区を実地調査、観察して、通学圏エコミュージアムを作図する。4)小金井第四小学校教員、小金井神社宮司と氏子総代にインタビューを行う。5)郷土史資料から見所の歴史資料を補足し、教材として提供する。
効果: アンソロパックの意識調査手法を活かしながら構想をまとめるトレーニングになり、通学圏エコミュージアムのコアミュージアムとして学校・学校園が地域の環境保全・創造のためにも重要な位置にあることが理解できたと思われる。教材の利用者である学校教員と重要な環境学習場所である小金井神社関係者からの聞き取り調査は有用な教材を開発するために有効であった。小金井第四小学校4年生は総合的学習の時間で「野川研究所」プロジェクトを行っており、彼らを対象に野川で実習を担当するように校長より依頼を受けた。この教育実践も実用的な教材開発のために補足資料となり、また、講義の中で開発した教材が受け入れられる契機ともなった。
図 小金井市立第四小学校通学圏エコミュージアムの提案
関連科目「環境民族植物学特論」(2006年度後期、大学院選択科目)
担当教員:木俣美樹男(環境教育実践施設)/ 曜日時限:火曜5限/ 教室:環境教育実践施設会議室/巡検地:山梨県小菅村中央公民館 植物と人々の博物館ほか
ねらいと目標: 多摩川源流に位置する山梨県小菅村において、現場を巡検して生物文化多様性を保全することを配慮したエコミュージアム日本村づくり構想を理解する。植物と人々の博物館づくりの一環として行っている、東西雑穀プロジェクトおよび民具展示プロジェクトに参画して、地域環境と植物が山村の暮らしをどのように支えているかを学ぶ。文化財審議委員との共同で民具を整理し、聞き取り調査の手法をトレーニングする。これらを通じて、エコミュージアムの野外展示とコア博物館の屋内展示の手法について習得する。
内容: 1)エコミュージアム日本村の構想について応用民族植物学の視点から概説した。2)小菅村村内全域を巡検した。3)伝統的な栽培植物である雑穀類を復活保存する東西雑穀プロジェクトに参画して、収穫物の脱穀作業を行った。4)伝統食であるそばの打ち方を地域の技術伝承者から習った。5)民具展示プロジェクトに参画して、文化財審議委員から民具について聞き取り聴取を行った。6)民具の写真記録と情報のデータベース作りを行った。7)これらの体験学習の成果をレポートにまとめ、展示に関しての提案を行った。
効果: 小中学校の教員ないしこれを目指す院生たちは目的意識が明確であるので、学校教育の一環としてエコミュージアム日本村と植物と人々の博物館がどのように活用できるかについて議論を進めることができた。地域環境が人々の暮らしとどのように関わっているのか理解したうえで、これをいかに解説するかの検討も進んだ。小菅村教育委員会によって収集されている民具のデータベースの骨格が整理でき、展示のデザインに関しても良い提案を得ることができた。これを参考に、博物館展示・収蔵室の整備を行うことにした。講義での提案が実際に適用でき、地域住民からも感謝され、とても有益であった。
写真 植物と人々の博物館における民具のデータベースづくり