5回 1125

 

電気力線の意味

 

(4.3) 式で,r 方向の方向ベクトルを  と書くと,

                                                                                 (5.1)

となる.電場の方向は,電荷の位置から「放射状」であり,大きさは電荷に比例し,距離の自乗に反比例する.そして,力を及ぼす相手があろうとなかろうと,電荷があれば,すでに空間には電場が生じているのであった.この「電場」という,空間に張り巡らされた物理量を視覚化したものが,電気力線である.下の図を見てみよう.

5.1

 

単独で存在する点電荷の電気力線が描いてある.図の矢印が,電気力線である.正の点電荷から,放射状に電気力線は出ている.負の電荷には,電気力線の向きは逆転して電荷に入り込むことになる.電気力線の数は図では8本であるが,これは便宜的なものであって,好きなだけ描けばよい.ただし,電気力線の本数は,電荷量に比例しているとしなければならない.つまり,例えば1Cの電荷にN本の電気力線を描くことにしたのなら,2Cには2N本の電気力線を書く必要がある.また,この図は2次元でしかないが,実際は3次元的である.電気力線の方向は電場の方向を表し,その面密度が,電場の強さに対応する

複数の電荷がある場合の電気力線は,上図の電場をまず単独の電荷として描き,次に,重ね合わせの原理で,それらが合わさった図を想像しつつ描いていけばよい.( 授業でやったとおりである.)

 

なお,電場ベクトルの空間分布をあえて矢印で表すと,下の図のようになる.

 5.2a 引力の場合

 

 5.2b斥力の場合

 

Q.       上図に電荷と電気力線を書き込め.

 

 

「点電荷から出ている電気力線の数一定の法則」

 

「点電荷から出ている電気力線の数一定の法則」などという法則は教科書には書いていない.これは,(積分系の)Gaussの法則として知られる式

                                                                          (5.2)

を,直感的に表現した,この授業独特のものである.なお,(5.2)は,閉曲面Sの表面全体で,面に垂直な電場(外向きを正とする)の大きさEnを面積分したものは,その閉曲面Sで囲まれた空間内部の総電荷量Qに比例することを表している.(Gaussの法則そのものについては,ずっと後の授業でまた触れたいと思う.)

 

「点電荷から出ている電気力線の数一定の法則」とは,点電荷から出ている電気力線の数は電荷に比例しており,どのような状況であろうとその数は一定である,という,呼んで字の如き法則である.ただし,負電荷の場合,電気力線は「マイナスに出る」から電気力線は入り込むことになる.

さて,ここで(5.1)式を少し違う面から眺めてみよう.(2.4)式のように,であるから,

と変形できる.は半径r の球の表面積であるから,これをSs と書くと,この球面を垂直に貫く電場の大きさは

                                                                                 (5.3)

を満たす.この式は,「球の面積は半径の自乗に比例して大きくなるが電場は半径の自乗に反比例して小さくなるので,その積は一定となる」ことを表している.電気力線で考えてみると,電荷を囲む球を貫く電気力線の本数は,その球の半径に関係なく一定である.つまり,

球の表面積×電場の大きさ∝電気力線の本数

と考えることができる.

それどころか,どのような曲面で電荷を囲っても,電気力線の数は一定であることがわかるであろう.

5.3

 

 

1.一様に帯電した直線のつくる電場

直線の電荷()密度をとする.直線をの微小区間に分けて考える.この微小区間のつくる電場は,中心に電荷量の点電荷があるとみなせるものとする.

図5.4

 

もし,この「みなし点電荷」が単独で存在するならば,図5.1と全く同じような,球対称の電場をつくる電気力線となるであろう.そして,その電場は

                                                                                (5.4)

を満たすであろう.(Sは球の表面積)しかし,今の場合,上下に同じ電荷の電場がずらりと並んでいて,斜め方向に電気力線を伸ばすことはできない.つまり,電気力線は直線に垂直方向に出て行くしかない.

図5.

 

したがって,図5.5のような2次元的に押し潰されたような電気力線が,平べったい円柱の側面から出ていく.ここで,「点電荷から出ていく電気力線の数一定の法則」より,電荷ΔQから出ている電気力線の数は球の場合と同じである.したがって,図5.5の下図のような円柱の側面を貫く電気力線の数は,(5.4)式と等しくなければならない.つまり,

電気力線の本数∝球の表面積×電場の大きさ=円柱の側面積×電場

が成立するはずである.よって,

が成立する.を代入すると,

                                                                                            (5.5)

と求まる.これは,通常,Gaussの法則を用いて求めるが,電気力線の考え方を適用すれば,Gaussの法則を知らなくてもこのように直感的に導くことができる.(電気力線の考え方が,直感的なGaussの法則の説明となっているのである.)

 

Q. 並行平板コンデンサの電場を,「点電荷から出ていく電気力線の数一定の法則」から導け.

(授業で扱ったが,ノートを見ないでやってみよ.)