日本カウンセリング学会で、「いじめソリューションバンク/学校システムの活用」という発表を聞いた。残念ながら、自分の発表が控えていたため、30分しか聞けなかったが、とてもおもしろい話だった。
いじめに関してマスコミから流される情報は、「いじめは深刻である」「死にさえ追い込まれる」「学校や教師はこの問題に無力である」といった内容のものが大半である。これらの情報にさらされることによって、人々は不安を強くし、子どもたちの自殺を誘発してしまうなどの弊害もいわれている。
失敗から学ぶことや最悪の結果について考えることは、大切なことだし、文化心理学では日本人の特徴だとも言われている。しかし、よくない結果に終わった話ばかり聞くと、暗い気持ちになり、不安感や絶望感は強くなり、なかなか力強く「よし、なんとかしよう」という気持ちにはさせてくれない。
そこで考えられたのがいじめソリューションバンク、日本語にすると「いじめ解決銀行」である。これは、学校や専門家、家庭の努力によっていじめを解決した成功例の話を蓄積し、社会に情報を提供しようとする試みである。
いじめをうまく解決した例の話を聞くと、明るくなれるし、具体的にどうすればよいかのヒントが得られる。関係者の中にも、いじめ解決に向けてがんばろうという前向きな気持ちにもさせてくれると思う。
まずはいじめが起きないようにすることが大切で、そのためにはいじめで悪い結果になった例の分析をすることは必要である。しかし、うまく解決した話を聞くことも重要であり、とくにマスコミの力を考えれば、もっとうまくいった例をたくさん伝えてほしいと思う。
この「いじめ解決銀行」は、東北地方を中心に「東北の魔女軍団」とよばれる女性の実践家や教師のみなさんによって実践されているとのことである。
*参考文献
水谷久康・布柴靖枝・鎌田啓子・石垣美幸・高徳忍 1998 いじめのソリューションバンク/学校システムの利用
日本カウンセリング学会第31回大会発表論文集 83-87.