Coccoという、うたうたいがいる。自分で作詞作曲もするのでいわゆるシンガーソングライターである。
歌番組で裸足で「Raining」という曲を歌っているのを聞いて気になっていた。その後、知り合いからすすめられ、CDを買って聞いてみたところ、すっかりはまってしまった。
メロディーが良いし、歌もうまい。しかしながら、なんといっても詞の包含する世界観が圧倒的である。
Coccoの書く詞には、「生」と「死」に関する表現が多く含まれる。最初は、その激しさに驚かされる。しかし、その激しさだけを売り物にしているわけではない。アルバムは80万枚ほど売れているらしい。多くの人が共感できるものを背後に含んでいるからだと思える。
有名な心理学者のフロイトは、人間の基本的な本能として「生の本能(エロス)」と「死の本能(タナトス)」を仮定した。
「生の本能(エロス)」は、生きること、快楽を楽しむこと、形あるものをつくりだし、成長させることを望む傾向である。性衝動とも関連が深い。
「死の本能(タナトス)」は、形あるものをもとの状態に戻すこと、不快や苦痛を求めること、眠りや休息を求めることと関連する傾向である。攻撃衝動との関連も深い。
エロスとタナトスは、融合して人間の衝動的な現象の多くに関係していると言われる。
フロイトの理論は広大で、奥が深い。私も勉強不足で、十分に理解しているとはいえない。Coccoの詞の世界も奥が深く、何を意味しているかは本人自身も分からないと思う。しかし、私はCoccoの詞を聞くと強く「エロス」と「タナトス」を感じてしまう。そして、それが多くの人の心に触れるのではと、感じている。