「もの」の豊かさ・「こころ」の豊かさ




 成人の自殺が増加しているという報告が出された。

 不況による経済的な苦しさが関係しているといわれる。不況による会社経営の悪化、解雇、転職、など、非常にストレスになる出来事である。

 この先の見通しがない、今までと違った生活パターンに変えなければならない、新たな人間関係を築かなければならないなど、心身ともに非常に負担になることがたくさん起こってくる。こういった状況では、こころのバランスを失ってしまうことも充分あり得る。

 日本は、「ものは豊かになったが、人々のこころは豊かになっていない」と、長年言われてきた。

 さらには、「ものが豊かになったぶん、こころは貧しくなった」と、まで言われることもあった。物質的に豊かでない方が、こころは豊かであったという人もいる。

 しかし、状況は変わってきた。「貧しくなった」とまではいえないかもしれないが、経済状況は悪くなってきた。それでは、「こころ」の方は、どうであろうか?


 ちゃんとしたデータをもっているわけではない。自分自身がそのような苦しみを味わったわけではない。しかし、貧困と戦争は、人々のこころに強いダメージを与えると思われる。

 貧困に苦しむよりも、物質的に恵まれた方が、また戦争で苦しむよりも、平和な世界の方が、こころの豊かさのためには有利だと思う。

 ただ、物質的に恵まれただけでは、平和な社会に生きるだけでは、こころは豊かになれないということも確かである。

 次の世紀に持ち込まれそうな宿題である。




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