「総合学習の中に見るこれからの家庭科の役割と貢献の可能性〜小学校家庭科教員を対象とした調査を通して〜」

章構成

1章 研究の動機・目的

2章 総合学習について

3章 家庭科に関連した総合学習の実践例

4章 日本教育新聞の「総合的学習の時間」

5章 総合学習に関する調査

6章 まとめ

【目的】
教育課程審議会は、学校週5日制の完全実施に向けて新しい教育カリキュラム改革を打ち出し、「総合的な学習の時間」を創設することを提言した。家庭科という教科は、生活を総合的に捉えていくことをねらいとしているため総合的な教科であるが、今回教育課程審議会が提案している「総合的な学習」と家庭科での総合学習の関連性、系統性、類似性、相違制などを考察し、明確な家庭科の果たすべき役割や貢献できることを打ち出す必要がある。本研究では、家庭科が総合的な学習の時間にどの程度関わっているのか、小学校を対象に調査分析することで、総合学習のメリットやデメリットを考察し、実施に向けて何らかの方向性を明らかにし、家庭科の新たな可能性やこれからの家庭科の役割について明確にした。また、中学高校の実践例についても日本教育新聞に掲載された実践例を取り上げ、分析調査をおこなった。
【方法】
 平成10年7月上旬に行われた東京都公立小学校家庭科研究会のおりにその研究会に参加された方に総合学習に関する調査を依頼し、その時から8月上旬にかけて回収した。なお、この研究会に所属している360人のうち、47人から回答があった。
【結果および考察】
 総合学習の実践をしているまたは実践について知っていると答えた教員は多くはないものの、総合学習の利点や問題点・課題点が多くあげられ、懸念されている問題に対して、迅速な対応が行政レベルで必要であることがわかった。総合学習に関わることについては、全体の59.6%の教員が、家庭科が何らかの形で総合学習に参加することができると答えており、積極的姿勢がみられ、また環境や食物に関する内容の授業実践例の記述など家庭科の総合学習の関わり方の具体的ビジョンを持っていることがわかった。全体的には、すべてに関係があるのが家庭科であり、そのてーまやかだいにかていかが関われる部分はほとんどのことに参加できるという意見が多くあり、総合学習に柔軟に対応していこうとする姿勢がみられる一方で、問題点や疑問点も多くあり、家庭科が総合学習に積極的に参加しにくい現状があることも明らかになった。
 国際理解、外国語会話、情報、環境、福祉など教課審で提示されたテーマに沿った家庭科としての学習展開については、家庭科で取り組んでいるものも多くあげられ、特に国際理解教育、情報、環境、福祉のテーマでは具体的プランを持って積極的に参加している例も多くみられた。
 「国際理解」においては食物に関する内容が、「情報」においては消費者教育と関連した情報選択能力の育成が、「環境」においては衣食住すべての内容で生活を実践する態度の養成が、「福祉」においては高齢者との関わりを考えることが、家庭科として中心的な役割を果たし貢献できる内容であることは明らかになった。上記以外のテーマの開発や、またどのようなテーマが家庭科として積極的な参加が望めるか、またどの部分で参加できるかを知ることは、家庭科の役割や貢献の可能性をさらに明らかにしていく上で重要なことである。
【まとめ】
 家庭科教材の中にはこの「総合的な学習の時間」のねらいを達成するよう内容が他にも多くあり、家庭科が総合学習に貢献できる可能性が多く存在していると言える。また、このような家庭科の果たすべく役割や貢献できる可能性を一教科だけの狭い枠に止めておくのではなく、他の教科との関連をはかるためにもこれらの家庭科の特徴をアピールしていく必要があると思われる。