「高等学校家庭科教科書の性別役割に関する記述の分析〜家族・保育領域についての研究〜」 【目的】 今日家族が多様化しているなかで、性別役割を見直していく必要が迫られている。また学習指導要領改訂において男女共同参画社会の推進と少子高齢化への対応が掲げられており、高等学校の新しい家庭科教科書の特に家族に関する記述については現代的課題を十分に配慮して記述されたと思われる。そこで実際に高等学校の家庭科教科書の家族に関する記述に着目し、今どのようなことが重要視されていて、家族について何を伝えようとしているかを追求することを目的とし、本研究を行った。 【方法】 分析対象は各出版社の「家庭総合」計8冊とする。まず現代の家族を捉えるためにそれに関わる記述に注目し今日の家族の特徴を踏まえる。次に性別役割に焦点を当て、家庭内のジェンダーバイヤスを取り払うための記述がどうされているか“人を表す単語”を拾い出しながら分析した。最後に、性別役割分業の一つに挙げられる育児を取り上げ分析した。 【結果及び考察】 @ 現代の家族について:どの教科書も伝統的家族像のほか、新たな家族形態を家族の多様化として取り上げていた。家族を巡る問題についても、性別役割分業意識にとらわれない平等な家族関係を築くことなどを示す記述がすべての教科書で取り上げられており、家族間のコミュニケーションを前提にし、新しい家族関係を創造する必要が強調されていた。また、今後の家族には情緒性が求められていると言うこともわかった。 A 性別役割について:家族・保育領域では“人を表す単語”が多く使われていて、特に家族領域で格段に多い。『男性』『女性』の語句と『父親』『母親』の語句が使い分けされていて、特に『親』としての役割を強調したい場面で『父親』『母親』の語句が用いられていた。家族領域では『男性』『女性』、保育領域では『親』の語句が多く用いられていることが特徴的であった。 B 育児の協力について:どの教科書も育児には親以外に他の家族員や地域の協力が必要であるとしており、家庭にとどまらず広く育児を担うことは求められているとわかった。 【まとめ】 今回改訂された家庭科教科書ではジェンダーフリーな表現が多く用いられていることから、男女平等が強調されていると理解できる。しかし、女性の社会進出や男性の家事・育児参加を取り立てて重要としている教科書も多いことから、逆に根強いジェンダーバイヤスが存在していることを示唆しているのではないかとも考えられる。そのことを自覚し問題意識を持って家庭科を指導していくことが今後の教師に求められていると思われる。 |