花 (4月撮影)
『東風吹かば 匂ひおこせよ梅の花 主なしとて春なわすれそ』 九州の太宰府へ左遷された菅原道真が京都を去るときに詠んだ歌ですね。各地にある天満宮(天神様)は道真を祀った神社ですが、道真が愛したウメの花を象徴としています。梅干しの硬い種を割ると、中から白い(シソ漬けの梅干しでは桃色)の柔らかなもの(仁)が出てきますが、これを「天神様」と呼ぶことがあります。熟していない青梅に毒があると言われるのは、実と種子(特に仁)に、体内に入ると毒を生じる成分が含まれるためなのです。
実 (6月撮影)
●時の左大臣藤原時平に陥れられ、太宰府で幽閉に近い状態で生涯を終えた菅原道真ですが、彼の死後、朝廷の要人の間で、多数の死傷者が生じ、また、災害や疫病が次々に起きる異変がありました。これを道真の祟りと恐れた藤原氏は、それを鎮めるため京都の北野に天満宮を建てました。これが神社としての天神様の始まりです。
●ウメの実の食べる部分や「天神様」には、若い頃にアミグダリンという物質が含まれています。
このアミグダリンが分解すると、猛毒のシアン化水素(俗に言う青酸)を生じます。
分解酵素(β−グルコシダーゼ)は、ウメの実自身にも含まれますが、動物の腸内に住む細菌(腸内細菌)も同じ酵素を生産します。このため私たちが青梅を食べると、腸内細菌が作った酵素によってアミグダリンが分解され、青酸ができてしまうのです。ただ、熟した実や、漬けた実ではアミグダリンは消失するので、毒性の問題も消失します。
(4月撮影)
●「松竹梅」と言われるように、ウメは吉祥の象徴です。この3つの植物、日本では上・中・下の格付けの符丁として使われます。ところが、元来、松竹梅の発祥の地、中国では平等な関係でした。宋の時代、「歳寒三友」といって、冬の寒い時に青々としている松と竹、そして花を咲かす梅をよき友と考え、文人画の題材として好まれていたのです。ところ変われば、解釈も変わるものなのですね。