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■カヤ
■イチイ科


実(9月撮影)

●オリーブの実より一回りくらい大きな緑色の実。少し捻れた筋状の模様が見られます。その中にはアーモンドのような形をしたカヤの種が入っています。アーモンドは、そのまま食べられますが、カヤはこの部分が硬い殻で、それを割ると中に柔らかい食用の部分があります。ただ、そのままではあくが強いので、水にさらしてあく抜きをする必要があります。食用になり、実から油も採れるカヤは、昔は農家の庭にしばしば植えられていました。また、各地の縄文遺跡からはドングリや、クリなどの実と共によく発見されています。

●カヤは日本の山野に自生する木ですが、今日、自然木は伐採のため、たいへん少なくなりました。カヤは成長が遅く、播種後3〜4年で樹高は30センチほどにしかなりません。直径1メートルの成木になるには300年を必要とします。しかし、その遅さが緻密な材を育てるため、カヤ材は耐久性があり木目が綺麗です。

伐採後は製品化までに10年は乾燥させる必要があります。このため、カヤ材は一般にはあまり使用されていません。その中で古くから知られたものに碁盤があり、イチョウ、カツラを凌ぐ最高級品とされています。カヤの碁盤は美しく、碁石を打ったときの響きもよく、さらに適度の衝撃吸収性と反発性をもつため、長時間打ち続けていても疲れないのだそうです。


実(10月撮影)

●カヤはイチョウと同じ裸子植物の仲間です。カヤ緑色の部分は仮種皮といって、胚珠がついている胚柄が変化したもので、ギンナンの実の臭う部分(種皮の外層:カプロン酸が原因物質)とは発生が異なります。また、その中に見られる硬い殻は種子の一番外側にある外種皮です。ギンナンの硬い殻も種皮ですが、ギンナンの殻は種皮の中層に相当します。同じ裸子植物といっても、カヤとイチョウは系統が大きく異なるため、一見似た構造をしていても、その発生過程は異なるのです。

●もちろん、カヤとイチョウの種子で共通していることもあります。ギンナンで食べているほとんどの部分は、種子内部の「胚乳」の部分です。カヤで食用にする部分もやはり「胚乳」。胚乳を構成する細胞は、内部に脂質、糖質、タンパク質などを蓄え、種子が発芽では栄養を供給します。

被子植物の胚乳は重複受精によって作られるため3倍体(核相が3n)です。私たちが食べる「白米」はイネの胚乳ですから、やはり3倍体です。ところが、裸子植物のカヤやイチョウの胚乳は1倍体(核相がn)なのです。これは、裸子植物では重複受精が行われないためなのです。


(10月撮影)


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