実(9月撮影)
● 実はドングリになるので誰もが知っています。では、「花は?」となると首をかしげる人も多いのでは。コナラの花は、4月、葉の芽吹きの直後に咲くのです。垂れ下がった細い枝にたくさんの花が付きます。華やかな花弁はなく、花序の形状からは風媒花のように思われますが、結構虫が花を訪れるので、花粉は虫媒もされているようです。コナラは武蔵野の雑木林を作る代表的な樹木です。かつて雑木林の木は、15年〜25年毎に伐採され、薪や炭に使われていました。伐採しても、コナラは切り株から新しい芽が生じ新しい木が成長します。これを萌芽更新と呼びます。
花(4月撮影)
雄花(4月撮影)
●ドングリとは、ブナ科の植物の果実の総称です。種子ではありません。もちろん、果実ですから、中に種子は入っていますし、大きくて栄養(主にデンプン)をたくさん蓄えています。例外的にクリの果実だけはドングリと呼ばないのですが、クリで説明すると、食べるところが種子で(正確には種子内部の子葉)、硬い茶色の皮は雌しべの子房が変化した果実の部分なのです。
コナラのドングリも食用できますが、タンニンが多く含まれ渋みがあり、流水でさらす、灰汁と共に煮沸するなど手を加える必要があります。大学構内に生える渋みがないドングリはスダジイです。スダジイは生食することも可能です。
黄葉
●「楢」という漢字はナラを意味しますが、「ナラ」という植物種はありません。ナラは「コナラ」と、より標高の高いところ(あるいは北に)に生える「ミズナラ」の総称なのです。楢の旁(つくり)である「酋」は、酒を造る壺から香りが立ち上がっていることを表した象形文字で、中国の殷の時代の意味は「ふるざけ」でした。今日、国産ウィスキーの樽は楢材を用いていますが、どこかで殷とつながっているようで興味深いですね。