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■サンショウ
■ミカン科


花 (4月撮影)

● 『山椒は小粒でピリリと辛い』でお馴染みのサンショウは、和食の中では、若芽、葉、実などすべての部分が使用される香辛料です。胡椒、唐辛子、生姜、そして辛子など、多くのスパイシーな食材が外国から持ち込まれたのに対し、サンショウはワサビと同じく、生粋の日本生まれ。山野に自生しています。

縄文遺跡の土器からサンショウの実が発見されており、日本人とは長いつき合いがあります。なお、四川料理で使う山椒はカホクザンショウといって、似ているけれども別種の植物です。


幼い実 (4月撮影)

●和食は素材の味を生かしたものが多いとされています。古来、日本人は、西洋人のように肉食生活をしていなかったので、料理に香辛料を用いることはあまりなかったのでしょう。そんな中、サンショウは料理の素材を引き出すアクセントとして、用いられてきました。

料理で「木の芽」といえば、サンショウのことを指します。鰻の蒲焼きも、山椒の粉をかけることで、川魚の臭みが消え、油っぽさをサラリと感じさせることができます。

●サンショウは昔から、健胃などの薬効があるといわれていました。今日では、辛み成分であるサンショオールには、大脳に作用し内臓の働きを活発化させる働きがあることが知られています。すりこぎ棒にはサンショウの材がしばしば使われてきました。これも、サンショウの持つ薬効を、昔の人が感じ取っていたからなのかもしれません。


(4月撮影)

●森鴎外が書いた『山椒大夫』は、人買いにさらわれ長者に売られた、幼い安寿と厨子王の姉弟愛、そして親子の絆を描いた小説です。山椒大夫は説教節正本「さんせう大夫」を素材に書かれました。「さんせう大夫」は丹後国の伝説上の人物で、山椒を売っている長者、あるいは三つ山荘を持っている長者(金持ち)とされています。

山椒大夫はサンショウを売って長者になったのかはわかりませんが、大夫らによる非人道的な仕打ちは別として、ここでは、中世の日本には、サンショウを売る人がいて、それを買う人がいたことに注目したいと思います。


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