●ナンテンは昔から「難を転ずる」に通じる縁起物として、正月を飾る植物です。
また、祝い事の赤飯の上に、ナンテンの葉を載せるのも、これに因んだものでしょう。
ところが、この葉には、赤飯を腐らせない御利益もあるのです!
これは、熱い赤飯に葉を置くと、葉に含まれるナンジニンからチアン水素という物質がごく微量発生し、殺菌効果が生じるためです。
ショウガやワサビには抗菌作用がありますが、植物には思いもよらない優れた力が潜んでいるのです。
花(7月撮影)
●ナンテンの葉は南天葉(なんてんよう)という生薬として、健胃、解熱などに効果があります。また、実にも薬用成分が含まれます。
●咳止め飴にナンテンを使ったものがありますが、これはナンテンの実に含まれるドメスチンというアルカロイド成分を薬として用いたものなのです。この成分は神経の末梢部に作用し、知覚や運動を鈍らせるため、咳が収まるのです。
●ナンテンは中世に中国大陸から日本へ持ち込まれた植物です。実は赤色だけでなく、白いものや黄色みを帯びたものなどがあり、葉も細いものから、ふっくらした幅広のものまでさまざまです。このため、江戸時代には観賞用植物として、実や葉の変異の面白さを競い合ったそうです。
若い実(9月撮影)
●現在では、正月用のめでたい木として、多数生産され販売されています。長野県の伊那地方は生産農家が多く、数万本の木を毎年出荷しています。
●ナンテンの花は白色で、中央部には大きめの黄色い雄しべの葯(やく)が目立ちます。花期は5月〜6月。