花(5月撮影)
●日本産の植物で、葉の一番大きな木は何でしょうか? おそらくホオノキはその第一候補でしょう。 長さは 30cmを優に超し、40cm以上ある葉も珍しくありません。
「我が背子が、捧げて持てる、ほほがしは、あたかも似るか、青き蓋(きぬがさ)」
万葉集に登場する“ほほがしは”はホオノキの古名。 枝のてっぺんに、丸く密につく大きな葉を傘に例えたのです。 この歌は僧惠行によるもので「我が背子」とは大伴家持のこと。彼は家持が手に持っていたホオノキの枝を見て、それを織物の傘(蓋)のようだと詠んだのです。
●ホオノキは葉だけでなく花も大きくて、直径は15cm程度あります。花が咲くと甘いけれど爽やかな香りが木の回りに漂います。
花(5月撮影)
●ホオノキの属するモクレン科の植物は、進化の上では原始的な特徴を備えています。花の中央にある先端が赤い水煙のようなものは、その一つ一つが雌しべです。そして、その下を取り囲むたくさんの“へら”のようなものは雄しべですが、こちらは根元が真っ赤です。
●ただ、ホオノキの印象は万葉の時代から花よりも大きな葉にあるようで、僧恵行による歌も花でなく葉を詠んだものとなっています。 また、英語名はJapanese umbrella tree もしくはJapanese big-leaved magnolia で、これまた大きな葉に因んだ名前になっています。
●“ほほがしは”の“かしは”は食べ物を載せる葉を意味しますが、ホオノキの葉は大きいので、食器として用いるには都合が良かったのでしょう。
●今日、ホオノキの葉には大腸菌や虫歯菌に対する抗菌作用があることが知られています。万葉の時代には細菌のことまではわからないでしょうが、食器として使っていた彼らの経験則には脱帽ですね。
(5月撮影)