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■モモ
■バラ科


花(4月撮影)

●モモやウメには1本の木に紅白の花が咲くものがあり、源平咲きと呼んでいます。大学構内にも1本源平咲きのモモがあります。源平咲きの母木は赤い花を咲かせるものです。白い花を咲かせる枝では、細胞の遺伝子が突然変異して、アントシアニンという赤い色素を作ることできないのです。源平咲きは生殖細胞レベルの遺伝子変異による現象ではないため、白い花に実ったモモの種を蒔いても、源平咲きの木にはならず、白い花だけ咲く木になってしまうのです。なお、源平咲きは突然変異に依らなくても、接ぎ枝で人為的に作ることもできます。


花(4月撮影)

●多くの場合モモは2つ花が同じ場所から芽吹きます。このため、1つの花しか芽吹かないウメと比べ、枝には花が密集して咲きます。また、モモは一重咲きの花では花弁の先端が尖ります。モモは花と花の間に葉を生じやすい特徴があり、さらに葉は細長いのが特徴です。モモとウメは品種も多いのですが、これさえ知っていればモモとウメを見分けることは簡単です。

●大学構内には、「ハナモモ」とよばれるモモが普通のモモ以外に何本か植えられています。ハナモモは樹形が横に広がらず直立して育ち、花も多くつけます。品種選抜をして改良した品種ですので、生物学的には、普通のモモと同種です。ですからハナモモも、ちゃんとモモの実が実ります。


(4月撮影)

●モモの実は古代から霊的な力があると考えられてきました。それを象徴するのが日本神話に登場します。死んでしまったイザナミに会いに黄泉の国を訪れたイザナギですが、見てはいけないと言われたイザナギの恐ろしい姿を見てしまい逃げ帰ります。しかし、イザナミに命を受けた鬼女、化け物に後を追われます。黄泉の境へ辿り着いたとき、そこに生えるモモの実を3つ投げ、難を逃れることができました。イザナギはモモに「おおかむつのみこと(意富加牟豆美命)」という神の名を与え、「人間たちが苦しんだときは、私にしてくれたように、助けてやってくれ」と命じたのです。

なぜ、古代人がモモに特殊な力があると考えたのでしょうか。生殖と関わりがあるとの説があります。しかし、もしかすると、若いモモの種子にも含まれるアミグダリン(本シリーズ「ウメ」を参照のこと)と関係があるのかもしれません。
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