(12月撮影)
●ヤツデは日本原産の植物。大きくて裂けた葉をもち「てんぐのはうちわ」とも呼ばれています。「八つ手」というからには8つに裂けていそうなものですが、実際は7つか9つと奇数のものがほとんどです。天狗が持つのは「羽団扇」か「葉団扇」か。表記は2つあり前者の方が多いのですが、各地の天狗像や絵が持つ団扇の先は、奇しくも奇数に裂けているのです。
雄花(12月撮影)
●鞍馬天狗で有名な鞍馬寺の天狗が持つ「はうちわ」は11個に裂けています。当然ながら鞍馬寺の寺紋の「はうちわ」や、お土産の降魔扇も11裂。そして、京都バスのマークの「はうちわ」も11裂。これに対し、下北沢で天狗道中を行う道了尊の「はうちわ」は9裂、その本山である小田原の大雄山最乗寺の「はうちわ」も9裂です。同じく筑波山の隣にある加波山神社の寺紋も9裂、鎌倉の建長寺の天狗の団扇も9裂。
ここまでくると、関西と関東で数が違いそうに思えるのですが、天狗で有名な高尾山には11裂と15裂の「はうちわ」がありました。しかも、境内で売っている「開運団扇」はなんと9裂。交通安全ステッカーでは7裂・・・これはデザイン上の問題ですね。でも、岐阜県美濃加茂市にある高さ12メートルの日本一大きな天狗像の団扇は7裂です。
雌花(11月撮影)
●家紋にある「はうちわ」は皆「羽団扇」。「梶の葉団扇」という明らかに葉っぱをデザインした家紋もあるので、それとわかります。また、古典芸能の能に出てくる天狗の団扇も羽でできています。ところが、富山県江柱町の獅子舞で登場する天狗の団扇は緑色をしていて、明らかに「葉団扇」です。
●今日の天狗のイメージは日本国内で作られました。実際、私は本物の天狗に会ったことがないので団扇の材質の真相はわかりません。ただ言えることは、天狗の「はうちわ」もヤツデも奇数に裂けていること。そして、どちらも日本産。これは偶然の一致なのでしょうか?