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■ヤマブキ
■バラ科


花 (4月撮影)

●5月5日、信州のとある山村を車で移動した時のこと。薄霞の中、小高い山にはヤマザクラが咲いていました。そして平地から山が立ち上がる真に山際に、黄色の花が列をなして咲いているのです。冬の眠りから覚めた山に、たおやかな息吹をもたらす。ヤマブキは、その名を光景に留めていました。「山吹」とは、そういうことだったのかと思った私の瞬間です。


春に芽吹き、秋まで青々していた葉は、冬の前に黄色から褐色に色づき落葉します。でも、細い枝は冬でも緑色です。知らない人には、ちょっと意外な特徴ですね。


花 (4月撮影)

●「山吹でっぽう」を知っていますか?細い竹の筒に、ヤマブキの枝の芯の部分(髄)を短く切ったものを詰め、反対側からも同じものを詰めた後、細い棒で強く突くと、「ポン」といって片方の髄が勢いよく飛び出すおもちゃです。今ではすっかり見なくなりましたが、材料さえあれば作れそうです。

髄は多くの双子葉植物(真性双子葉植物)の茎の中心部の柔らかいところ(維管束の木部で囲まれた内側の柔組織)で、茎のどこより大きな細胞でできているのが普通です。一度乾燥した髄は発泡スチロールのような弾力があり、水分吸収することもできます。そこで、ヤマブキの髄をちょっと濡らして竹筒に詰めると、とても軽快な音がします。

ヤマブキのように髄の直径が大きくなる植物にはニワトコが知られています。また、茎が生長すると髄の組織が死んで、穴になってしまうウツギのような植物もあります。

●「七重八重、花は咲けども山吹の、実の一つだに無きぞ悲しき」 兼明親王(後拾遺集)のこの歌は、八重咲きヤマブキが「実の一つ」ないことと、貸し出せる雨具の「蓑一つ」ないことを掛けた粋な歌なのですが、むしろ、太田道灌の「山吹の里」の逸話、はたまた落語「道灌」で知っている人の方が多いかもしれません。

ところが、この歌を知っていたために、ヤマブキに実ができないと思い込んでいる人もいるのです。実際、八重咲きのヤマブキに実はできません。これは八重咲きの花弁は雄しべが変化しているため、花粉が生じないのです。

でも、一重咲きのヤマブキには雄しべがあり花粉を作りますので、実は実るのです。ヤマブキの雌しべは5本有り、子房も5つあります。しかし5つ実ができることは希で、3つ以下がほとんどのようです。


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