■カラタチ
 ■ミカン科


花(4月撮影)

●4月初めに咲く白い花は、ひたすら可憐。玉のような若い実はビロード毛で被われ愛らしい。でも、緑色の棘は強く鋭い。この情緒的ギャップは、昔からカラタチを印象深い植物に仕立ててきました。昔は侵入者除けに垣根として多く使われましたが、今では垣根自体が少なくなりました。

しかし、カラタチは依然として身近な植物です。それは、今日、私たちが食べる日本の農家で生産する柑橘類の95%以上の木が、カラタチに接ぎ木して栽培されているからなのです。


まだ成熟していない実(6月撮影)

●今日、キュウリ、ナス、トマトは、そのほとんどが接ぎ木で栽培されています。また、メロンやスイカはユウガオを台木として接ぎ木栽培が行われています。果樹では甘柿を作るために接ぎ木が行われますし、モモ、リンゴそして柑橘類でも接ぎ木が一般的に行われています。

接ぎ木をすると、接いだ木の方の遺伝的特徴はそのままに、台木のもつよい性質を導入することができます。台木には葉がないので光合成はしませんが、その代わり、土中から養分と水を送る重要な役割をもちます。

カラタチには、たくさんの根を生じ、土中に張る性質があります。また、反日陰でも育ち、暖かな気候を好む柑橘類の中では、北方でも栽培できる種類です。このような性質を持つカラタチに、他の柑橘類を継ぐと、早い年数で多くの実を収穫できるのです。


(4月撮影)

●柑橘類の台木としてカラタチを使うのは、日本、韓国、中国のみで、欧米ではダイダイの仲間であるサワーオレンジを多く使っていました。1950年代中頃から1980年代まで、これらの国ではオレンジがウイルスに感染し、大打撃をうけていました。トリステザウイルスといって、これに感染すると木が枯死するのです。

このウイルスはミカンクロアブラムシが媒介します。このアブラムシはどこにでもいるアブラムシで、日本にもいて体内にウイルスをもっていることが知られています。ところが、日本の柑橘類はトリステザウイルスの被害に遭っていません。これは台木に使っているカラタチが極めてウイルスに強いからなのです。

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