■サザンカ
■ツバキ科
●11月、12月に花を咲かせる数少ない植物です。常緑の葉の上に、赤やピンクや白の花を多数つけるので目立ちます。ツバキに似ますが、ツバキは花弁が付け根で合着しており、花が散るとき、全部の花びらが一緒にポロリと落ちるのに対し、サザンカでは合着がなく、花びら一枚一枚がばらばらに散ります。
一重咲きのツバキでは雄しべも付け根が合着していて花びらと一緒に落花しますが、サザンカの雄しべは合着していません。また、ツバキの開花時期は 2ヶ月ほど遅く、年が明けてからになります。
●万葉集には7世紀中頃から8世紀中頃までに詠まれた歌が編纂されていますが、ツバキを詠んだものはあっても、サザンカを詠んだものが見当たりません。これほど目立つ植物なのにちょっと不思議です。これは、本来のサザンカの分布と関係があるようです。
サザンカは四国、九州の南部から、西南諸島、台湾、そして東南アジアに分布する植物で、日本は生育地の北限にあたります。万葉集の時代、国の中心地であった大和盆地にサザンカは自生していなかったのです。
●サザンカの花芽の形成は8月頃に始まり、9月には終了しています。多くの植物では、花芽形成が終わっても、アプシジン酸という休眠ホルモンにより開花が抑えられています。サザンカはこのホルモンの生成量が少ないため、11月には開花してしまいます。
ツバキの花芽はサザンカより1月ほど遅れて形成されますが、アプシジン酸のために開花が抑制されるため、より遅れて開花するのです。
●実は春に咲くサクラなど他の植物も、多くは前年度に花芽を形成しているのです。しかし、アプシジン酸のために開花できません。このホルモンは冬のになり、低温になると分解します。ところが、今度は低温のために開花のための成長が抑制されてしまい、結局は気温が高くなる春に開花するのです。
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