■センダン
 ■センダン科


花(5月撮影)

●日本の古色に、楝(あふち・おうち)色があります。少し青みがかった若干薄い紫色。 何を隠そう、楝はセンダン(栴檀)の古名で、かの清少納言もかなりのお気に入り。

「木のさまにくげなれど、楝の花いとをかし。かれがれにさま 異に咲きて、かならず五月五日にあふもをかし」(枕草子37段)。

この花を紫の紙で細く巻いて結わえた花束も彼女のお気に入りです。 手紙に添えて送っていたのでしょう(枕草子39段)。

●枕草子の37段“木の花は”では、紅梅、桜、藤、橘、梨、桐の花と共に楝(あふち)を載せています。楝は藤や桐と同様に紫色の花を咲かせますが、日本の木で紫色系の花は少なく、清少納言が7種のうち3種にも紫色の花をあげたことは、彼女が紫色にとりわけ気を引かれていたからでしょう。実際、86段“めでたきもの”では「すべて紫なるは、なにもめでたくこそあれ、花も、糸も、紙も。」と記しています。


花(5月撮影)

●センダンの花をよく見ると、その枝には茶色をした粉状の毛がたくさんついています。また、花びらの数は4〜6枚と一定ではありません。

これらのことは、枕草子37段の「枯れ枯れに様異に咲きて・・(しなびたように変わった咲き方をして・・)」に表れているようにも思えるのですが、さて真相は如何に。

●清少納言がなぜ、楝の木の格好が憎たらしいと思ったのかはよくわかりませんが、センダンの枝は、広い角度で枝分かれをすることが多く、本学の木もそんな樹形となっています。


(5月撮影)

●吉田兼好による徒然草(41段)の中で、賀茂の競べ馬見物のため、枝別れの上で、何度も落ちそうになりながら居眠りをしていた僧が登っていたのは、なんと“あふち”の木。きっとその樹形が木登り心を掻き立てたのでしょう。

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