■タチバナモドキ
■バラ科
●明治の時代になると、様々な園芸植物が西洋から日本へ持ち込まれるようになりました。 タチバナモドキもその一つ。フランスからの導入です。最近では属の学名である「ピラカンサ」と呼ばれることも多くなりました。 これは、実の色が赤い幾つかの近縁種が出回るようになり、まとめて1つの名で呼ぶ方が簡単なためなのでしょう。
●日本では、植物の分類には種名と科名が最も良く使われます。これは、お隣の中国も同じです。 ところが世界的には属名を頻繁に使います。
花屋の店先で「アリウム」という植物の球根が売られています。 花は、垂直に伸びた太めの茎の上に、紫色で大きく球状に咲くので人気があります。 この植物、もし花の色が白だったら、まるで「ねぎ坊主」です。 そう、ネギやタマネギは共に属名が「アリウム」なのです。 属でくくられた植物の種は、科でくくられた種よりも、ずっと似た特徴をもっているのです。
●ピラカンサ属の別種として、実が赤いトキワサンザシや、実が濃紅色のヒマラヤトキワサンザシなどがあります。大学構内にはこれらの木も植わっているので探してみましょう。
●福羽逸人(ふくばはやと)はタチバナモドキを日本へ導入した、明治の農学・造園・園芸学者です。 フランス・ドイツに留学し、東京の新宿御苑などの造園を担当したほか、東京の道路の並木として、 沢山のプラタナスやユリノキを育てました。
さらに、彼はイチゴ、キュウリ、ナスなどの促成栽培の方法の開発や普及、そして品種改良に力を注ぎました。彼は西洋で知った温室にヒントを得、ガラス障子の片屋根式フレームを考案し、馬糞や落ち葉たい肥などを内部に置くことで、自然の熱源としました。今で言うなら、さしずめエコ農業、そして、福羽逸人は施設園芸の祖といってよい人でしょう。
今日、温室やハウスを利用する農業のことを、施設園芸と呼び、施設で作る野菜は、全野菜の4割弱となっています(2010年、経営体数割合)。わが国の施設園芸の面積は5万3千ヘクタールで、世界でも有数の栽培面積を誇っています。
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