■タラヨウ
 ■モチノキ科


実(12月撮影)

● 赤い実が鞠のように群れを成し、冬の季節によく目立ちます。タラヨウの葉は常緑で細長く20cm位。この葉の裏側に釘や爪先などで文字や絵をかくと、すぐにその跡が黒く変色します。そして、書かれたものは葉が枯れても残ります。

戦国時代の頃、武士がこの木の葉に文を書いて送り、「葉書」の語源になったとも言われています。筆もペンも不要、葉だけあればよいのです。現代では差し詰め天然のメモ帳といったところでしょうか。

●人間は紙を発明する以前、様々な媒体に文字を記録していました。バビロニアの粘土板、エジプトのパピルス、木簡、羊皮紙などが有名ですが、インドではヤシ科のオウギヤシの葉に竹筆や鉄筆のようなもので文字を書いていました。


葉(12月撮影)

この葉のことをサンスクリット語で「パトラ」pattra(木の葉の意味)と呼び、それを音写した中国語では「貝多羅」と表記しました。そして、日本ではこの文字媒体のことを「ばいたら」あるいは「ばいたらよう(貝多羅葉)」、または単に「ばいよう(貝葉)」と呼びました。

モチノキ科のタラヨウの名前は、文字を記録できるという性質が貝多羅葉に似ていることに由来しています。

●「葉書」の語源にもなったといわれるように、タラヨウは郵便にとっては関係が深そうな木です。そこで平成9年に、当時の郵政省はタラヨウを「郵便局の木」に制定し、その後、各地の郵便局が、局のイメージツリーとして植樹を行いました。


(12月撮影)

●タラヨウには雄の木と雌の木があります。学芸大では写真を撮影した木から10m位離れたところに雄の木があります。葉は雌の木と同じで違いがありませんが、こちらは当然ながら、実がつきません。もちろん、どちらの葉にも文字を書くことはできますので、百聞は一見にしかず、一度試し書きしてみてはいかがでしょうか。

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