■ツバキ
 ■ツバキ科


花(4月撮影)

● 『赤い椿白い椿と落ちにけり』これは碧梧桐の代表的な句です。俳句で詠まれるツバキの花は、『鶯の笠おとしたる椿かな』芭蕉、『椿落て昨日の雨をこぼしけり』蕪村、『赤椿落ちたる平家物語』虚子、『ぬくうてあるけば椿ぽたぽた』山頭火・・・等々、調べてみるとおよそ半分は落ちた花です。

ツバキでは、花びらだけでなく、雄しべも付け根がくっついて(合着して)いるので、落花のときは、雌しべを除いた花全体が抜け落ちるのです。地面や水面に落ちた、その華麗な姿に日本人は感慨を持ち続けてきたようです。


八重咲き(3月撮影)

●日本の野生のツバキは、ヤブツバキとユキツバキが代表的な種です。ツバキが文化史の中で注目され始めたのは室町時代の工芸品、秀吉時代の茶の湯など以降のこと。そして、徳川二代将軍秀忠が、江戸城内に諸国から名花を献上させたことが、ツバキ栽培が普及する契機となりました。

芸術では琳派もツバキを好んで題材とし、それは絵画、陶器、着物などへと広がり、ツバキはサクラと並ぶ日本を代表する花木となりました。

●ツバキの仲間は元々日本、中国、東南アジアに分布した植物で、18世紀にヨーロッパへ伝えられました。品種改良は欧州でも盛んに行われ、19世紀になると、ツバキは華麗な花としてファッション界で流行します。

小デュマの小説「椿姫」(1848年)の女主人公は、華やかな裏社交界でツバキの花を身につけていたことから「椿姫」と呼ばれました。ヴェルディーのオペラ「椿姫」の原作はデュマの小説です。しかし、オペラを鑑賞してもツバキの花は出ないことが多いようです。これはオペラの原題が「ラ・トヴィアータ(堕落した女)」のためです。今日ツバキの園芸品種は世界では2000種を超しています。

●ツバキの実から取れるツバキ油にはオレイン酸という不飽和脂肪酸が豊富に含まれます。この量はオレイン酸が多いとされるオリーブ油以上です。ヒトの皮膚に潤いを与える皮脂には約41%のオレイン酸が含まれています。このため、ツバキ油を使用した化粧品やシャンプーは人肌に優しいのです。

また、食品として体内に取り込まれたオレイン酸は酸化されにくいため、動脈硬化・高血圧・心疾患などの生活習慣病の予防・改善に役立ちます。


(3月撮影)

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