■ネムノキ
■マメ科
「象潟や雨に西施がねぶの花」
●松尾芭蕉が奥の細道行脚での最北の地、象潟で詠んだ句です。 「ねぶ」はもちろんネムノキのこと。昔、中国の越の国から、呉の 国王へ送られた西施という美女がいて、その美しさあまり、呉の国王は 骨抜きにされ、あげくの果ては国を滅ぼしたと言われています。
芭蕉は名勝の地で雨に濡れたネムノキの花を見て、遠い西国での 逸話を思い出し、イメージを膨らませたのでしょう。
●赤い刷毛を広げたような花ですね。でも、これはみんな雄しべ。花びら(花弁)は一枚もありません。
●夜になると小さな葉の列が、手を合わせるように重なり合います。それは、ちょうど手を触れて動いたオジギソウの葉が重なったような形に似ています。その格好が眠っているようで、ネムノキとなりました。
●オジギソウは手で触ると、すぐ葉が閉じますが、残念ながらネムノキは葉が閉じません。やはり明暗の変化が必要なのです。
ただ、葉が開閉するメカニズムは同じで、葉の付け根の少し膨らんだ部分(葉枕)の細胞の内部圧力(膨圧)の変化が原因となっています。
●ネムノキの花は珍しい形をしています。でも、ネムノキはマメの仲間、つまりマメ科の植物なのです。その証拠として、実の形はまるでサヤエンドウのようです。
また、他のマメ科植物と同じように、根の細胞の中には根粒菌という細菌が共生していて、空気中のチッソを植物が利用できる形にして提供しています。
チッソはいわずとしれた植物の3大肥料(チッソ、リン、カリ)の一つ。このため、マメ科植物はやせた土地でも育つことができるのです。
●大学内のネムノキは背が高くて、眠っている姿が見えなかったですが、2007年に苗木が高木の近くに植えられました。夕方過ぎに見に行ってみてはいかがでしょうか。
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