■ヤエザクラ “フゲンゾウ
 ■バラ科


花(4月撮影)

●フゲンゾウは八重咲きのサトザクラの一品種で、中央にある2本の雌しべが、緑色をした小さな葉になっているのが特徴です。この雌しべを、普賢菩薩がゾウに乗っている姿になぞらえ、「普賢象」の名前がつきました。

八重咲きの植物は、雄しべが花弁に変化したと考えられていますが、フゲンゾウでは、いくらか雄しべが残っています。また、雄しべや雌しべ、そして花弁や萼は、進化の途上で葉から生じたと考えられています。この意味において、フゲンゾウの葉化した雌しべは、植物の進化を彷彿させる興味深いものといえましょう。


雌しべ・雄しべ(4月撮影)

●サクラには500とも600とも言われる品種があります。平安時代から庭木としても植えられるようになり、それ以降、突然変異した天然木を接ぎ木で増やしたり、さまざまな品種の改良が行われました。

オオシマザクラなどを原木とし、人為的に改良したものをサトザクラと総称しています。ヤエザクラは八重咲きのサクラの総称で、突然変異により生じた八重咲きの天然木と、八重咲きのサトザクラとをあわせると300種以上あります。フゲンゾウもサトザクラの仲間ということになります。


(4月撮影)

●葉や花の芽の元となる細胞の集まりを元基と呼んでいます。元基が葉になるか花になるかは、細胞の中でどの遺伝子が発現するかによって決まります。花になるまでの遺伝子の発現段階は幾つもあり、葉になる場合も花になる場合も、途中の段階までは同じ遺伝子が順番に発現しています。

このため、1つの遺伝子が変わったり、無くなったりするだけで、花が葉のようになったり、雄しべが花弁になったりすることが、幾つかの植物で実験的に確かめられています。

●生物の進化は、元を正せば遺伝子の変化です。フゲンゾウの雌しべの葉化は、進化現象の裏付けの可能性を秘めているのです。

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