■ムクロジ
 ■ムクロジ科


実(11月撮影)

●手にとって振ると、カラカラと音を立てる薄い飴色の実。皮をむけば 中から真っ黒な種が現れます。保健管理センターと生協の間に、これが たくさん落ちているのを見たことのある人は多いはず。これがムクロジの実です。 黒い種は正月遊びの羽根突きの羽の黒い玉に使われる、とても身近な植物です。 また、実の皮は水の中で揉めば泡が立つため、昔は洗剤として使われていました。

●羽根突きの謂われの1つに、トンボに似た羽根を飛ばすことで、蚊などの害虫を駆除するというものがあります。大きなムクロジの種は、さながら大きな目玉を持つトンボの頭というところでしょうか。


青い実(8月撮影)

●なぜ羽根突きの羽にムクロジの種が使われたのかは、今となってはわかりません。ただ、適当な重さと大きさであること、板で叩いても割れない固さがあること、先が尖ったりせず球形であること、簡単かつ多量に収穫できることなど、羽の玉としての要件が、ムクロジに備わっていたと考えるのは容易いことでしょう。

●『本草綱目啓蒙』(1803〜1905年)という本があります。これは江戸時代後期に小野蘭山が講義したものをまとめた博物誌です。この本のムクロジの項に、果実の外皮を属にシャボンと呼ぶこと、そして、油に汚れた布を洗うために用いることが書かれています。 このように、ムクロジの実は昔の石鹸として、灯明の煤の汚れを洗ったり、洗髪に使ったり、身近な生活用品として使われていたのです。

●ムクロジの実が洗剤の効果をもつのは、サポニンという泡立ち物質を多量に含むためです。ムクロジの学名Sapindus mukorossiのうち前半のSapindusは“インドの石鹸”を意味し、後半のmukorossiは日本のムクロジそのものの名前ですね。ちなみに英語ではChinese soapberry もしくは soap nut tree で、やはり石鹸の意味となっています。今日でも、インドの一部などでは、ムクロジの仲間の実を天然洗剤として使っているそうです。

●ムクロジの実を2,3個拾って、空のペットボトルに入れて、下1/3くらいまで水を入れましょう。次に、キャップをして強く振ります。すると、ペットボトルの中は白い泡だらけになります。簡単な実験ですので、是非挑戦してみて下さい。、


(11月撮影)

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