■ヤブラン
■ユリ科
●ヤブランは古くは山菅、あるいは菅と呼ばれていた植物です。
『妹(いも)がため、菅(すげ)の実(み)摘(つ)みに、行(ゆ)きし我(わ)れ、 山道(やまぢ)に惑(まと)ひ、この日暮(く)らしつ』
これは柿本人麻呂の歌です。彼は愛しい人のために、この実を山へ摘みに 行ったところ、道に迷って一日を過ごしてしまったのです。人にも自然にも 優しい、おおらかな万葉時代のロマンを感じさせる歌ですね。
●ヤブランはラン科ではなく、ユリ科の植物です。しかし、葉の細長いところが、山野に生えるシュンランを思い起こさせます。ユリ科の植物は6枚の等しい大きさの花被片(花びらと萼を合わせたもの)をもちますが、ラン科の6枚の花被片は全部が同じではない点で大きく異なります。
●花が咲き終わった後に着いている球形の実のようなものは、一見、果実に見えますが、じつは違います。多くの被子植物では胚珠(発育して種子となる部分)は子房に包まれて成長します。また、子房の部分は発育すると果実になります。
ところが、ユリ科のヤブラン属やジャノヒゲ属では花が咲いた後、胚珠が膨らんで子房の壁を破ってしまい、むき出しになってしまうのです。このため、果実のように見えるものは、胚珠の発育した種子ということになるのです。
●ヤブランの種は熟すと黒紫色になり、煎じると滋養、強壮、催乳、せき止めの効果をもつ生薬(大葉麦門冬:だいようばくもんどう)となります。
●中国、日本など東アジアが原産の常緑多年性草本。
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