■ヤマグワ
 ■クワ科


花 (4月撮影)

●全く切れ込みのない葉、片側だけ切れ込みのある葉、両側に切れ込みのある葉など、クワは1本の木に、さまざまな形の葉をつけています。このような性質を異葉性といい、ズミやダンコウバイにも見られます。しかし、その理由はわかっていません。

クワの実は暗赤色から黒紫色をした粒が集まった楕円球の形をしています。多花果といって幾つもの花から作られた果実(上述の粒)が集まって1つの果実を形成しています。雌花を見ると緑色をした花被(萼と花弁をあわせたもの)をもつそれぞれの花から、先端が2つに分かれた白い雌しべが1つずつ飛び出しているのがよくわかります。多花果を作る植物には、パインアップル、イチジク、スズカケノキ、ヤマボウシなどがあります。


若い実(4月撮影)

●養蚕で多く用いたクワの種、はマグワを改良したもので、山野に生えるマグワより葉がやや肉厚です。また、ヤマグワでは、実の先端に雌しべの名残がはっきり残るのに対し、マグワではあまり目立ちません。

●おとなの絹の着物1枚を作るのに必要なカイコは約2,700頭です。このカイコが食べるクワの葉の総量は約100キロ。そして、このクワの葉を採取するためには50平方メートルの畑が必要です。この広さは、学芸大の図書館前の、噴水があるケヤキ林とほぼ同じ面積です。正絹の着物が、なぜ値段が高いかがわかると思います。


葉(11月撮影)

●明治以降、昭和初期までの時代、わが国の養蚕業は国力増強のため外貨獲得を担う一大産業でした。日本の製糸産業の最盛期には、農地の40%が桑畑にもなりました。日本における製糸産業は群馬県富岡の官制工場に始まりますが、その後は長野県、岐阜県で発達しました。

製糸は地方の産業です。このため、生糸を輸送するために鉄道さえ作りました。明治30年(1897)群馬県には上野鉄道(現上信電鉄)が、大正5年(1916)には丸子鉄道(1969廃線:現上田交通の丸子線)がそうです。地方私鉄は1960年半ば以降、多くの路線が廃線となりました。それらは鉱山用であったり、観光用であったりしましたが、絹糸を運ぶために作られた鉄道もあったのは感慨深いことです。

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