授業と学校図書館

授業で役立つ活用事例を「先生のひとこと」として紹介します。
 

先生のひとこと
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2024/01/11

学校図書館を活用した授業

Tweet ThisSend to Facebook | by 村上
 このデータベースに、新書点検読書の実践事例を以前提供くださった新潟県立高校の国語教諭 押木和子先生に、現在の勤務校での実践について執筆をお願いしました。高校では「総合的な探究の時間」が2022年からスタートしています。押木先生の学校図書館と連携したこのような実践は、もっと広がっていいのではと思い、依頼させていただきました。(編集部)



学校図書館を活用した授業(国語科として)    
                  新潟県立三条高等学校教諭 押木和子


1 三条高校の概要

 

 三条高校は、各学年普通科6クラスで、ほとんどの生徒が大学進学を目指す高校である。三条市・燕市は古くから金属加工技術の集積地として知られる「ものづくりのまち」である一方、農業も盛んで、近くに豊かな自然環境がある。令和3年度より文部科学省WWLコンソーシアム構築事業の拠点校に指定され「希望に満ちた未来を創るリーダー育成システムの構築~地場産業の町・日本の穀倉地帯からSDGsを目指す~」という構想のもと、地域課題を理解するとともに、海外の学校との連携を通じて、視野を広げ、課題解決することを目指している。県内の大学教員、三条市・燕市をはじめとする自治体、観光協会、近隣企業、NPO法人などから、指導・助言を受けながら生徒たちは探究活動を行っている。


2 なぜ学校図書館を活用した授業が必要なのか

 

 これまでも、私は学校図書館を活用して授業を行ってきたが、コロナ禍後ますます図書館を活用する力が必要になっていると感じる。なぜなら、タブレットが生徒全員にいきわたり、手軽にインターネットを使って調べたり、まとめたりすることができるようになると、基本的な知識や、情報の正当性・妥当性を本で確認する必要が出てきたからだ。またわざわざ学校図書館で本を読む時間や機会を作らないと、タブレットやスマホ利用に終始し、全く本を読まずに高校生活を終える生徒が増えてしまうからだ。一部の本好きの生徒だけでなく、すべての生徒に学校図書館の活用を体験させたいと考えている。

 図書館を効果的に活用するには、資料を準備しておくだけではだめで、実際に何度も本を手に取らせて生徒を鍛える必要がある。そのため、国語科のシラバスを作るときから、年間計画を考慮し、学校司書に相談して授業内容を考えた。(写真上 学校図書館での授業風景)



3 探究活動と国語の授業の関係

 

 三条高校では学校設定科目「グローカル探究」において、探究学習を行っている。1年生はSDGsに関わるテーマ、2年生は地域の問題を解決するテーマを自分達で設定し、グループで探究活動を行い、発表する。3年生は個人でそれまでの探究活動をまとめてレポ―トを作成する。(編集部注 グローカルとは、グローバル=「地球規模・世界規模」とローカル=「地元・地域」を意味する2つの英単語を組み合わせた造語)


 「グローカル探究」の授業の中で、生徒が最も図書館を有効に活用できるのは、テーマを考える時と、テーマの基礎知識や先行研究を調べる時だろう。学校司書は以前から新潟県におけるSDGs事例や県央地域の地場産業に関する新聞記事のスクラップを作成しており、県央地域隔週のパンフレットやリーフレットを収集し展示していた。SDGsに関係した書籍も別置されており、生徒がテーマを考えるのにふさわしい環境が用意されていた。また館内に探究学習の参考になる本のコーナーを設置し、生徒がレポートを書いたり、プレゼンテーションしたりする際に参考にできるようになっていた。図書館は、探究学習のインプットとアウトプットもサポートする場所になっている。

   しかし、放っておけば生徒たちは、図書館に行かずにインターネット検索に終始してしまうだろう。後述するが、そうならないために「グローカル探究」が本格的に始まる前に、図書館で資料の探し方や、新書の読み方、引用の仕方や参考文献の記載の仕方の練習を国語の授業で行うことにした。

   テーマを絞れない生徒は、図書館内の入門的な資料やインターネットの記事を読みながら、自分たちの興味がどこにあるかを探りテーマを決める。テーマが決まっても、調査を進めると既に誰かによってその研究が進められている場合や、テーマが大きすぎて自分達で探究できそうにないことがある。その場合は、再び図書館に戻る。この繰り返しの中で、探究テーマが決まり、リサーチクエスチョンが明確になっていく。

 図書館で、探究のスキルを身に付ける一方で、ひたすら本を読む授業も行った。資料を探せても、専門書を読みこなせない場合が少なくない。生徒それぞれが自分の選んだ本をじっくり読む体験や、必要な情報を探し出す練習、情報を記録する練習を国語の授業で行ったのだ。飯田一史によると(『「若者の読書離れ」というウソ』平凡社2023第4章)押し付け的な読書は逆効果で、その人が好きなものを好きに読める環境や機会の提供が重要だという。国語の授業では、生徒が自由に本を選んで読める時間を確保することを目指した。

 以上のことから、1年生の必修科目「現代の国語」2年生の「論理国語」の授業の中で下記のような実践を図書館で行った。できるだけ、シラバスの中に入れて他の教材と関連させながら、計画的に行っている。学校司書やほかの授業担当者と事前に相談し、授業はティームティーチングで行っている。評価はワークシートの提出状況や生徒間での発表の様子を観察して行った。点検読書後に簡単なアンケートを実施した。



(写真 左「SDGsに関する本」の図書のコーナー  下「新潟県SDGs事例・県央地域の地場産業に関する新聞記事スクラップ・パンフレット )

 

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