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2010年度 金曜日 前期 英語教育学リサーチデザインA 2010.5.07
Research Design A

::::課題::::

早期英語教育の効果A
 Warm upはおしまい。いよいよゼミ本番です。脳漿を絞って、とことん考える練習を本格的に始めてもらいます。

 さて、第1回目のトピックは早期英語教育の効果です。

 2011年からいよいよ公立の小学校で外国語活動(事実上は、英語活動)が5, 6年生を対象に全面的に必修化されます。英語ノートの一応、2011年には配られるようです。しかし、小学校の先生にとっては不慣れなことで、当分の間、混乱が続くと考えられます。また、もうその先を見越して、英語の教科化についての議論も始まってきているようです。

 このような状況下で、世間一般には早期英語教育にますます大きな期待がかけられています。しかし、話題になっている割に、データを示して行われる議論はあまり多くありません。実際に、早期英語教育には効果はあるのでしょうか。あるとしたら、どんなところにどんな形であらわれるのでしょうか。

今回はこのトピックで実証研究を企画してみて下さい。

「効果」というとき、それには少なくとも次のような要素を考慮しなければなりません。

1) 短期的効果か長期的効果か。(あるいはその両方か。)
2) どこに効果が現れるか(英語力なのか、それ以外の面なのか)。さらに英語力なら英語力のどんな側面か、英語力以外なら具体的にどんな面に影響するのか等も考える必要があります。
3) 早期教育の内容に関わるのか、早く始めるということが大切なのか。

 皆さんはどんな効果を期待しますか(あるいは期待しないのですか)。期待する効果についてまず述べてください。たとえば、態度の面で長期的に見た場合効果があるなど。(これがあなたの早期教育についての理論です)。もちろん、どの側面にも効果はないと思う人もいつかもしれません。それは、それでOKです。
 どのような理論であっても、自分の理論を支えるための実証研究を企画して、その研究計画(research proposal)を書いて下さい。

 ポイントは研究方法です。あなたの理論を支える証拠を、どのようにして(how)得るのかを示すことがこのゼミで一番大切なことです。Howがなければ研究はできません。また、研究方法を考えつくには、自分の研究課題を考え抜くことが必要になります。証明をする必要がなければ人は本当に真面目に考えません。このゼミで「方法」を扱っているのはそのためです。

 それから前回も書きましたが、研究計画書はなるべく詳しく書いて、他人様がそれを見てあなたが意図した研究を実行することができるように配慮して下さい。

 

受講者が持ち寄ったリサーチデザインについて自由に意見を交わしました。

◆受講者から出た主なデザインは・・・

・「積極的にコミュニケーションを図る態度の育成は可能か」どうかを調べるため、児童の道案内の様子をチェックする研究
→年齢、発達段階によって変わってくるのでは!?
→日本語でも道案内をさせてみては!?

・大学生に日本人と外国人が会話しているビデオを見せ、外国人の日本語が許容できるかを調べる研究
→「許容」の定義があいまい。特にYes/Noの2択での判断は難しいのでは!?
→会話の音声のみを聞かせた後、ビデオを見せたらどうか

・小学校3年生から英語活動を始めた学習者と、小学校5年生から始めた学習者との態度の違いを、中学校における生徒の行動から調べる研究
→学習量による差が出てしまい、純粋に開始時期による差かどうか分からないのでは!?
→中学校の環境により結果が左右されてしまうのでは!?

・早く始めると発音がネイティブライクになるかを音読により比較する研究
→「ネイティブライク」とは?
→教科書の音読は練習により上手くなっている可能性があるので、初見の英文にすべきでは!?


◆金谷先生のコメント:

・具体性がない研究デザインはダメ。人にデザインを渡して、その人が実施できるような計画書を作るべし
・研究デザインの実現可能性も考慮しなければならない
・目的と研究デザインがズレないように注意
・「態度」を測るのは難しい。そもそも「態度」とは何か
・意欲を測るためには、アンケートよりも行動観察の方が良い

::::次回の課題::::

未知語の推測?とばし読み?@

早期教育の効果については、ご苦労様でした。頭の体操、どうでしたか。自分の頭で考えるということは本当に大変なことですが、一番人間的なことです。そして、研究をする上で、最も大切なことです。借り物の考えで、「研究」するのは止めにしましょう。

 さて、次のトピックは、前回と比べると規模の少し小さいトピックです。それだけにより精密に考える必要があります。頭の体操も徐々に緻密さを要求されることになります。

 今回は読解についてです。高校生以上の読解指導では、英文を読んでいるとき、知らない単語(未知語)が出てきたらどうするか、どうすべきかについてはいろいろな意見がありますね。

 とにかく、知らない単語が出てきたら、ちゃんと辞書を引く習慣を身につけることが英語学習の基本中の基本だという指導をする高校や大学の先生はたくさんいます。

 そうかと思うと、未知語は推測できる場合が多いから、未知語に出くわしたらすぐ辞書を引くのではなく、まずその意味を文脈から推測してから、辞書を調べるべきだという人もいます。

 また、未知語が推測できる場合はあまりないので、推測しようとするのはあまり意味がない。大切なのは、推測するのではなく、未知語の部分を飛ばし読みが出来るがどうかだという先生もいます。

 それから、推測できる場合でも推測しない生徒がいる。実際に推測できる、できないは別として、推測する習慣をつけるのが大切だという主張もあります。

 さて、あなたはどう思いますか,どの立場、どの考え方に立つかはあなたの自由ですが、その場合、自分の考え、立場の正しさをサポートするには、どのような証拠を示す必要があるでしょうか。

どんな証拠が必要かを考えた上で、その証拠を示すための実証研究を計画してみてください。

 研究とは具体的な仕事です。授業と同じです。このことは、このゼミを通じて何回も繰り返すことになると思います。

 研究計画はどのくらい具体性を持つがどうかが勝負です。具体性を持つためには研究課題に対する真剣な分析が必要です。課題についてねばり強く考え抜くことが必要とされます。是非、本気で取り組んでみてください。