I 連携のためには依頼が必要である
II 非協力、抵抗を常態と想定するべきである
III 駆け引きなしに協力を得るのは困難である
IV まず教師が「生きる力」を発揮しなければならない
おわりに
総合的学習に保護者を含む地域住民の協力を求める交渉の過程では、教師には、是々非々の議論による説得だけでなく、過重負担、大幅な妥協や譲歩、みずからの教育論の再検討などを伴う駆け引きが必要になると予測できる。筆者は、その駆け引きが教師にとって不本意かつ過酷なものになることを憂慮する。しかし、そのような駆け引きを伴う交渉の過程で教師に必要な、他者に対処しつつ実践上の問題を解決する能力は、総合的学習の過程で児童・生徒が身につけるよう期待されている「生きる力」の必須要素である。このことをふまえるなら、地域住民の協力を仰ぐための交渉自体に、総合的学習を充実させるためのヒントの宝庫という性格を見いだすことができるのではないだろうか。ここでいう充実とは、人的・物的条件を整えて児童・生徒の多様な学習活動を可能にすることではない。児童・生徒の将来に待ち受けている、教師自身が経験したのと同様の過酷な交渉に備えて、総合的学習の過程に児童・生徒の交渉能力を育成する機会を設けることである。