研究科長挨拶東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科長 澤 隆史東京学芸大学連合学校教育学研究科は、1996年に我が国で初めて教員養成大学・学部に設置された博士課程であり、現在、4大学の9講座に所属する250名の教員が熱意をもって学生の指導にあたっています。本研究科は設置以来、20余年の間に380名を超える博士号の学位取得者を送り出し、その多くは全国の教員養成にあたる大学や学部においてそれぞれの専門領域における研究を推進させるとともに、次世代の教員養成に向けて教育活動に専念しています。これまでの修了生の活躍を見ると、教育研究者の後継者育成という本研究科の趣旨は相当程度達成していると思いますし、今後も力量を有した研究者の育成を目指して、さらに研究環境や教育指導体制の充実を継続していきたいと考えます。 本研究科では、「教科教育学・教科専門諸科学・教育科学を融合する新しい『広域科学としての教科教育学』を創造し、学校教育の発展に寄与する」ことをアドミッション・ポリシーとして掲げています。学校教育という営みは長い歴史の中で、それぞれの時代に応じた改善や工夫を繰り返しながら続いています。「予測困難(volatile)で不確実(uncertain)、複雑(complex)で曖昧(ambiguous)」な時代」が予想される現代、教育に関する様々な情報が毎日のように発信されており、今日そして今後の学校教育の在り方について多くの議論がなされています。「学校に通い勉強する」という経験は誰もが有しているものであり、誰もが教育に対する自分なりの思いや考えを巡らせることができます。たくさんの思いや考えが重なり、共鳴し、錯綜することがよりよい教育の形を作り上げていくことを難しくさせているのかもしれません。このような中でこそ、「広域科学としての教科教育学」の創造、すなわち多様な学問領域の視点を融合しながら新しい教育の在り方を科学的に追求していく姿勢がさらに強く求められると考えます。たくさんの思いや考えに目を向けながら、よりよい教育を作り上げていこうとする意欲を持った人が必要だということです。本研究科に在学する学生の皆さん、また本研究科での学修を希望されている皆さんには、学校教育の実際について深く理解すること、幅広い見地から物事を見つめ思考すること、科学的に探究する姿勢を持ち続けることを期待します。そして、それぞれが関心のあるテーマを深く研究し、博士論文として結実させていく中で、「教育の未来に向けて自分に何ができるのか、どんな役割を果たすべきか」という教育研究者としての自覚と自信を得て欲しいと思います。東京学芸大学連合学校教育学研究科での学修や研究活動が、教育の未来とともに皆さんの未来を拓くための礎となることを願っています。
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