行事

過去の合同ゼミナール

平成19年度東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科
合同ゼミナールについて

ワークショップの趣旨と展望

 

自然系教育講座 甲斐 初美

 テーマ設定の経緯
 本研究科は、「広域科学としての教科教育学」の創造・発展を目指し、教育科学のアプローチや教科の基礎となる専門諸科学の見識を参照しながら、教科教育学における課題を解決していくことが求められている。こういった認識に立脚すれば、教育に関するあらゆる社会問題に対して、多角的な見解を学術的に論述していくことも、本研究科に所属する者としての重要な資質である。そこで、本年度の合同ゼミナールにおけるワークショップでは、具体的な教育諸問題に関して、ディベート形式のワークショップ、すなわち、個人的な見解を排除した状態で、その課題の争点を焦点化するとともに、それぞれの立場を見越した上で、自らの置かれた立場に基づき説得的に見解を論述する機会を構想したのである。
 確かに、例年のように、いわゆるワークショップ形式、すなわち、基調提案をもとに議論する形態で、「広域科学としての教科教育学に携わる私たちの展望と課題」や「教育実践と研究」について議論することによって、本研究科設置の意義を理解していくことも重要である。あるいは昨年のように「博士論文執筆経験談に基づく学問的座談会」によって、より具体的な博士論文執筆における我々の置かれた立場を再認識していくことにも意味はある。しかし、前者のように大上段に構えたテーマは抽象的すぎて深化に欠け、後者は基調提言が経験談という性格上、研究生活の相談に終始する傾向にあるという反省があったため、今年度は、敢えてこれまでのワークショップの形式を一新し、ディベート形式でのワークショップを提案したのである。



 実施方法

◇事前準備◇
 ワークショップテーマは、A「学校で『命の授業』は実施すべきか」、B「中学生に携帯電話は必要か」、C「学校選択制を取り入れるべきか」の三つの具体的教育問題を合同ゼミナール委員会の方で設定した。そして、希望調査をもとにして、それら三つのテーマに参加者を振り分け、各テーマの座長を指定した。さらに、それらの教育問題に関する賛成的見解と反対的見解の両方を包含するような新聞記事や体験記等を資料として作成・配布し、敢えて賛成・反対の立場を決定せず、各々のテーマに基づくディベート形式のワークショップ準備を求めた。
◇分科会◇
 分科会は、(1)賛成・反対の立場の決定(5分)、(2)各立場での見解整理 (10分)、(3)見解の主張(10分)、(4)各立場での討論内容整理(10分)、(5)討論(20分)、(6)投票(5分)の流れで構成し、合計1時間を設けた。座長は、これらの議論をホワイトボードに整理し、全体会での報告準備を行った。
◇全体会◇
 全体会では、テーマごとの座長が、(1)分科会における双方の主張、争点、議論の経過、および、投票結果についての報告(5分)、(2)質疑応答(5分)を行った。



 今後の課題と展望
 今年度のワークショップでは、上述したような趣旨のもと新たな試みで、ディベート形式のワークショップを行った。その結果、大別して、ディベートの認識上の課題とその運営上の課題の二つが浮き彫りとなった。前者については、ディベートそのものに関する認識が、広義的なものから狭義的な解釈に至るまで、参加者によって異なっていたため、狭義的ディベートの認識を持つ参加者にとっては厳密性を求める傾向、広義的ディベートの認識を持つ参加者にとっては見解を主張することのみに終始してしまう傾向があったことが課題であった。後者については、座長を中心とした参加者全体が、ディベートテーマのねらいや双方の主張、論点について認識するための時間的・内容的準備不足が課題であった。いずれにしても、上述したようなディベート形式のワークショップを行う趣旨やテーマ設定の経緯について、運営委員会の方で、参加者全体に周知させていく必要があると考える。
 しかしながら、このような反省を十分に生かすことができるならば、本年度の新たな試みであるワークショップの意義は格段に高まると推察される。より具体的に述べれば、このような機会を設けることは、日常的に専門分野における研究論上の認識に立ち続けている個々人に対して、具体的な教育諸問題に関する見識を深めさせるだけでなく、専門的な見解を教育実践場面に向けて、いかに説得的に発信していくかを再認識させる契機になるといえるのである。このような意味においても、今年度の試みは、来年度以降の合同ゼミナールの発展に寄与すると考える。

平成19年度の日程について


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