[要約] 国立4年制大学教育学部在籍学生(計136名)を対象に,オスのカブトムシの脚の付き方を尋ねる等の一連の心理学的実験を実施し,昆虫学に関する素人が甲虫をはじめとした昆虫の特に形態面に関する概念を形成する際には「人体メタファ」なるメンタルモデルが関与した2種の類推,つまり,1)実体験時の記憶の再生の代替処理としてなされる類推と,2)当該事象に関するいわゆる学校知の欠如を補完しようとしてなされる類推が多用されることをつきとめた.なお,これらは少なくとも今日の自然科学の文脈においてはいずれも正論に非ず,したがってある種のオルタナティブな持論と捉えるべきものと言える.
[キーワード] 昆虫,甲虫,オルタナティブ,メタファ,類推.