中学校指導要領解説保健体育編平成20年9月 文部科学省 柔道指導の手引きはこちら
(2)内容及び内容の取扱いの改善について
〔体育分野〕
コ武道
「武道」については,従前どおり,「柔道」,「剣道」,「相撲」の中から選択して履修できるようにすることとした。また,「内容の取扱い」に,武道場などの確保が難しい場合は,指導方法を工夫して行うとともに,学習段階や個人差を踏まえ,段階的な指導を行うなど安全の確保に十分留意することを示した。
第2章保健体育科の目標及び内容
第1節教科の目標及び内容
2教科の内容
F武道
[第1学年及び第2学年]
武道は,武技,武術などから発生した我が国固有の文化であり,相手の動きに応じて,基本動作や基本となる技を身に付け,相手を攻撃したり相手の技を防御したりすることによって,勝敗を競い合う楽しさや喜びを味わうことのできる運動である。また,武道に積極的に取り組むことを通して,武道の伝統的な考え方を理解し,相手を尊重して練習や試合ができるようにすることを重視する運動である。
武道は,中学校で初めて学習する内容であるため,基本動作と基本となる技を確実に身に付け,基本動作や基本となる技を用いて,相手の動きの変化に対応した攻防ができるようにすることが求められる。
また,技能の上達に応じて,基本となる技を用いた自由練習やごく簡単な試合で攻防を展開することを発展させて,得意技を身に付け,自由練習や簡単な試合で攻防を展開できるようにすることをねらいとしている。
したがって,第1学年及び第2学年では,技ができる楽しさや喜びを味わい,基本動作や基本となる技ができるようにする。また,武道の学習に積極的に取り組み,伝統的な行動の仕方を守ることなどに意欲をもち,健康や安全に気を配るとともに,礼に代表される伝統的な考え方などを理解し,課題に応じた運動の取り組み方を工夫できるようにすることが大切である。
1技能
(1)次の運動について,技ができる楽しさや喜びを味わい,基本動作や基
本となる技ができるようにする。
ア柔道では,相手の動きに応じた基本動作から,基本となる技を用い
て,投げたり抑えたりするなどの攻防を展開すること。
(1)柔道
柔道は相手と直接組み合って,基本となる技や得意技,連絡技を用いて相手と攻防を展開しながら,互いに「一本」を目指して勝敗を競い合う運動である。第1学年及び第2学年では,相手の動きに応じた基本動作から,基本となる技を用いて攻防を展開できるようにする。
「相手の動きに応じた基本動作」とは,相手の動きに応じて行う姿勢と組み方,進退動作(動画),崩し(動画)と体さばき,受け身のことである。受け身には,前回り受け身,横受け身,後ろ受け身がある。
指導に際しては,これらは相手の動きに応じた動作であるため,「崩し」から相手の不安定な体勢をとらえて技をかけやすい状態をつくる「体さばき」,「技のかけ」をまとまった技能としてとらえ,対人的技能と一体的に扱うようにする。特に,「受け身」は,投げられた際に安全に身を処するために,崩し,体さばきと関連させてできるようにし,相手の投げ技と結び付けてあらゆる場面に対応して受け身がとれるようにすることが大切である。
<例示>
○基本動作
・姿勢と組み方では,相手の動きに応じやすい自然体で組むこと。
・進退動作では,相手の動きに応じたすり足,歩み足,継ぎ足で,体の移動をすること。
・崩しでは,相手の動きに応じて相手の体勢を不安定にし,技をかけやすい状態をつくること。
○受け身
・前回り受け身(前から・斜めから見た映像・その1・その2)では,前方へ体を回転させ,背中側面が畳に着く瞬間に,片方の腕と両脚で畳を強くたたくこと。脚は下側の脚を前方に,上側の脚を後方にすること。
・横受け身では,体を横に向け下側の脚を前方に,上側の脚を後方にして,両脚と一方の腕全体で畳を強くたたくこと。
・後ろ受け身(横から・前から見た映像・座・立位その1・その2)では,あごを引き,頭をあげ,両方の腕全体で畳を強くたたくこと。
「基本となる技」とは,投げ技の基本となる技と固め技の基本となる技のことである。
投げ技は,取(技をかける人)と受(技を受ける人)の双方が比較的安定して投げたり,受け身をとったりすることのできる技のことである。また,固め技は,取と受の双方が,比較的安定して抑えたり,応じたり(逃れたり)することのできる技のことである。
指導に際しては,投げ技では,2人1組の対人で,崩し,体さばき,受け身を用いて,投げ技の基本となる技を扱うようにするとともに,膝車から支え釣り込み足などの支え技系,大外刈りから小内刈り,大内刈りなどの刈り技系,体落としから大腰などのまわし技系など系統別にまとめて扱うようにする。また,固め技では,固め技の姿勢や体さばきを用いながら,固め技の基本となる技や簡単な技の入り方や返し方ができるようにすることが大切である。
なお,固め技には,抑え技,絞め技,関節技があるが,生徒の心身の発達の段階から中学校では抑え技のみを扱うこととする。
<例示>
○投げ技
・取は後ろさばきから体落としをかけて投げ,受は横受け身をとること。
・取は前回りさばきから大腰をかけて投げ,受は前回り受け身をとること。
・取は前さばきから膝車をかけて投げ,受は横受け身をとること。
・取は前さばきから大外刈りをかけて投げ,受は後ろ受け身をとること。
・取は前さばきから支え釣り込み足をかけて投げ,受は横受け身をとること。
・取は前さばきから小内刈りをかけて投げ,受は後ろ受け身をとること。
○固め技
・取は,「抑え込みの条件」を満たして相手を抑えること。
・取はけさ固め,横四方固め,上四方固めで相手を抑えること。
・受はけさ固め,横四方固め,上四方固めで抑えられた状態から,相手を体側や頭方向に返すこと。
「投げたり抑えたりするなどの攻防を展開する」とは,自由練習やごく簡単な試合で,相手の動きに応じた基本動作を行いながら,投げ技の基本となる技を用いて,投げたり受けたりする攻防や抑えたり返したりする攻防を展開することである。
指導に際しては,投げ技では,対人でのかかり練習,約束練習,自由練習を通して技の形を正しく行えるようにすること,進退動作との関連で,相手を崩して技を素早くかけるようにすること,相手との動きの中で,相手を崩して自由に技をかけるようにすること,投げ技の基本となる技を用いたごく簡単な試合を自由練習の延長として,1分〜2分程度行うことができるようにすることが大切である。
また,固め技では,「抑え込みの条件」を満たして相手を抑えること,けさ固め,横四方固め,上四方固めなどの基本となる技で相手を抑えることや,片方が仰向けの姿勢や互いに背中合わせの姿勢で回る方向を決めてから,相手を固め技で10秒〜20秒程度抑えることができる試合をすることなどがねらいとなるが,技能の上達の程度に応じて指導を工夫するようにする。
(剣道と相撲については省略)
2態度
(2)武道に積極的に取り組むとともに,相手を尊重し,伝統的な行動の仕方を守ろうとすること,分担した役割を果たそうとすることなどや,禁じ技を用いないなど健康・安全に気を配ることができるようにする。
第1学年及び第2学年では,技ができる楽しさや喜びを味わい,基本動作や基本となる技ができるようにすることに積極的に取り組めるようにする。
「相手を尊重し,伝統的な行動の仕方を守ろうとする」とは,武道は,相手と直接的に攻防するという特徴があるので,相手を尊重し合うための独自の作法,所作を守ることに取り組もうとすることを示している。そのため,自分で自分を律する克己の心を表すものとして礼儀を守るという考え方があることを理解し,取り組めるようにする。
なお,伝統的な行動の仕方の指導については,単に形の指導に終わるのではなく,相手を尊重する気持ちを込めて行うことが大切であることに留意する。
「分担した役割を果たそうとする」とは,練習やごく簡単な試合を行う際に,防具や用具の準備や後片付け,審判などの分担した役割に積極的に取り組もうとすることを示している。そのため,分担した役割を果たすことは,練習や試合を円滑に進めることにつながることや,さらには,社会生活を過ごす上での必要な責任感を育てることにつながることを理解し,取り組めるようにする。
「〜など」の例には,仲間の学習を援助しようとすることがある。これは,練習の際に,仲間の練習相手を引き受けたり,技の行い方などの学習課題の解決に向けて仲間に助言したりしようとすることなどを示している。そのため,仲間の学習を援助することは,自己の能力を高めたり,仲間との連帯感を高めて気持ちよく活動することにつながったりすることを理解し,取り組めるようにする。
「禁じ技」とは,安全上の配慮から,中学校段階では用いない技を示している。そのため,柔道では蟹鋏,河津掛,足緘,胴絞,剣道では突き,相撲では,反り技,河津掛,さば折り,極め出しなどの禁じ技を用いないことを理解し,取り組めるようにする。
「健康・安全に気を配る」とは,体調の変化などに気を配ること,危険な動作や禁じ技を用いないこと,用具や練習及び試合の場所などの自己や仲間の安全に留意することや,技の難易度や自己の技能・体力の程度に応じて技に挑戦することが大切であることを示している。そのため,体調に異常を感じたら運動を中止すること,竹刀などの用具の扱い方や畳などの設置の仕方や起きやすいけがの事例などを理解し,取り組めるようにする。
3知識,思考・判断
(3)武道の特性や成り立ち,伝統的な考え方,技の名称や行い方,関連して高まる体力などを理解し,課題に応じた運動の取り組み方を工夫できるようにする。
○知識
「武道の特性や成り立ち」では,武道は,技を身に付けたり,身に付けた技を用いて相手と攻防する楽しさや喜びを味わうことのできる運動であること,武技,武術などから発生した我が国固有の文化として今日では世界各地に普及し,例えば,柔道がオリンピック競技大会においても主要な競技として行われていることを理解できるようにする。
「伝統的な考え方」では,武道は,単に試合の勝敗を目指すだけではなく,技能の習得などを通して礼法を身に付けるなど人間としての望ましい自己形
成を重視するといった考え方があることを理解できるようにする。
「技の名称や行い方」では,武道の各種目で用いられる技には名称があり,それぞれの技を身に付けるための技術的なポイントがあることを理解できるようにする。例えば,柔道には体落としという技があり,技をかけるためには崩しと体さばきの仕方があること,剣道には面抜き胴という技があり,技をかけるためには体さばきの仕方があること,相撲には,上手投げという技があり,技をかけるためには寄りの仕方があることを理解できるようにする。
「関連して高まる体力」では,武道は,それぞれの種目で主として高まる体力要素が異なることを理解できるようにする。例えば,武道を継続することで,柔道では主として瞬発力,筋持久力,巧緻性など,剣道では主として瞬発力,敏捷性,巧緻性など,相撲では主として,瞬発力,巧緻性,柔軟性などがそれぞれの技に関連して高められることを理解できるようにする。
「〜など」の例には,試合の行い方がある。自由練習の延長として,ごく簡易な試合におけるルール,審判や運営の仕方があることを理解できるようにする。
○思考・判断
「課題に応じた運動の取り組み方を工夫」するとは,活動の仕方,組み合わせ方,安全上の留意点などの学習した内容を,学習場面に適用したり,応用したりすることを示している。第1学年及び第2学年では,基礎的な知識
や技能を活用して,学習課題への取り組み方を工夫できるようにする。
<例示>
・技を身に付けるための運動の行い方のポイントを見付けること。
・課題に応じた練習方法を選ぶこと。
・仲間と協力する場面で,分担した役割に応じた協力の仕方を見付けること。
・学習した安全上の留意点を他の練習場面に当てはめること。
[第3学年]
第1学年及び第2学年の「基本動作や基本となる技ができるようにする」ことをねらいとした学習を受けて,第3学年では,相手の動きの変化に応じた攻防を展開できるようにすることを学習のねらいとしている。
したがって,勝敗を競う楽しさや喜びを味わい,技を高めることによって得意技を身に付けることができるようにする。また,武道の学習に自主的に取り組み,相手を尊重し,武道の伝統的な行動の仕方を大切にすることや,自己の責任を果たすことなどに意欲をもち,健康や安全を確保するとともに,見取り稽古の仕方などを理解し,自己の課題に応じた運動の取り組み方を工夫することができるようにすることが大切である。
1技能
(1)次の運動について,技を高め勝敗を競う楽しさや喜びを味わい,得意技を身に付けることができるようにする。
ア柔道では,相手の動きの変化に応じた基本動作から,基本となる技,得意技や連絡技を用いて,相手を崩して投げたり,抑えたりするなどの攻防を展開すること。
(1)柔道
第3学年では,相手の動きの変化に応じた基本動作から,既習技や得意技,連絡技の技能の上達を踏まえて,投げ技や固め技,また投げ技から固め技への連絡を用いた自由練習や簡単な試合で攻防を展開することができるようにする。
「相手の動きの変化に応じた基本動作」とは,この段階では,相手の動きが速くなるため,その変化に対応することが必要となる。こうした相手の動きの変化に応じて行う姿勢と組み方,進退動作,崩しと体さばき,受け身のことである。
<例示>
○基本動作
・姿勢と組み方では,相手の動きの変化に応じやすい自然体で組むこと。
・進退動作では,相手の動きの変化に応じたすり足,歩み足,継ぎ足で,体の移動をすること。
・崩しでは,相手の動きの変化に応じて相手の体勢を不安定にし,技をかけやすい状態をつくること。
○受け身
・相手の投げ技に応じて前回り受け身,横受け身,後ろ受け身をとること。
「基本となる技」とは,投げ技の基本となる技は,取(技をかける人)と受(技を受ける人)の双方が比較的安定して投げたり,受けたりすることのできる技のことであるが,この段階では既習技に加えて,大内刈り,釣り込み腰,背負い投げ,払い腰がある。また,固め技の基本となる技は,取と受の双方が比較的安定して抑えたり,応じたり(逃れたり)することのできる技のことであるが,この段階では既習技のけさ固め,横四方固め,上四方固めがある。
「得意技や連絡技」とは,得意技は自己の技能・体力の程度に応じて最も技をかけやすく,相手から効率的に一本を取ることができる技であり,連絡技とは,技をかけたときに,相手の防御に応じて,さらに効率よく相手を投げたり抑えたりするためにかける技のことである。
指導に際しては,投げ技では,2人1組の対人で,崩し,体さばき,受け身を用いて投げ技の基本となる技を扱うようにするとともに,2つの技を同じ方向にかける技の連絡,2つの技を違う方向にかける技の連絡など系統別にまとめて扱うようにする。また,固め技では,固め技の姿勢や体さばきを用いながら,固め技の連絡ができるようにすることが大切である。
<例示>
○投げ技
・取は前回りさばきから背負い投げをかけて投げ,受は前回り受け身をとること。
・取は前回りさばきから払い腰をかけて投げ,受は前回り受け身をとること。
○投げ技の連絡
<二つの技を同じ方向にかける技の連絡>
・大内刈りから大外刈りへ連絡すること(別方向から見る)。
・釣り込み腰から払い腰へ連絡すること(別方向から見る)。
<二つの技を違う方向にかける技の連絡>
・釣り込み腰から大内刈りへ連絡すること。
・大内刈りから背負い投げへ連絡すること(別方向から見る)。
○固め技の連絡
・取は相手の動きの変化に応じながら,けさ固め,横四方固め,上四方固めの連絡を行うこと。
・受はけさ固め,横四方固め,上四方固めで抑えられた状態から,相手の動きの変化に応じながら,相手を体側や,頭方向に返すことによって逃げること。
○投げ技から固め技への連絡
・大外刈りからけさ固めへ連絡すること。
・小内刈りから横四方固めへ連絡すること。
「相手を崩して投げたり,抑えたりするなどの攻防を展開する」とは,自由練習や簡単な試合で,相手の動きの変化に応じた基本動作を行いながら,投げ技の基本となる技,得意技や連絡技を用いて相手を崩して攻撃をしかけたりその防御をしたりすることである。
指導に際しては,投げ技では,対人での練習を通して,既習技を高めるとともに,相手の動きの変化に応じて相手を崩し,得意技や連絡技を素早くかけるようにすること,また,相手の動きの変化に応じて,相手を崩して自由に得意技や連絡技をかけるようにすること,投げ技の得意技や連絡技を使った自由練習や簡単な試合で攻防ができるようにすることが大切である。
また,固め技では,基本となる技を高めるとともに,得意技や抑え技の連絡を用いて相手を抑えることや,固め技の試合で15秒〜25秒程度抑えることができる試合をすることなどがねらいとなるが,技能の上達に応じて指導の仕方を工夫することが大切である。
(剣道と相撲は省略)
2態度
(2)武道に自主的に取り組むとともに,相手を尊重し,伝統的な行動の仕方を大切にしようとすること,自己の責任を果たそうとすることなどや,健康・安全を確保することができるようにする。
第3学年では,技を高め勝敗を競う楽しさや喜びを味わい,得意技を身に付けることに自主的に取り組めるようにする。
「相手を尊重し,伝統的な行動の仕方を大切にしようとする」とは,伝統的な行動の仕方を所作として単に守るだけではなく,礼に始まり礼に終わるなどの伝統的な行動の仕方を自らの意志で大切にしようとすることを示している。そのため,相手を尊重し,勝敗にかかわらず対戦相手に敬意を払う,自分で自分を律する克己の心を理解し,取り組めるようにする。
「自己の責任を果たそうとする」とは,練習や簡単な試合の進行などで仲間と互いに合意した役割に,責任をもって自主的に取り組もうとすることを示している。そのため,自己の責任を果たすことは,活動時間の確保につながることや自主的な学習が成立することを理解し,取り組めるようにする。
「〜など」の例には,互いに助け合い教え合おうとすることがある。これは,練習の際に,投げ込みや打ち込みの相手を引き受けたり,運動観察などを通して仲間の課題を指摘するなど教え合ったりしながら取り組もうとすることを示している。そのため,互いに助け合い教え合うことは,相互の信頼関係を深めたり,課題の解決に役立つなど自主的な学習を行いやすくしたりすることを理解し,取り組めるようにする。
「健康・安全を確保する」とは,相手の技能の程度や体力に応じて力を加減すること,けがや事故につながらないよう竹刀や畳の状態などを整えること,施設の広さなどの状況に応じて安全対策を講じること,自己の体調,技能・体力の程度の程度に応じた技術的な課題を選んで段階的に挑戦することなどを通して,健康を維持したり自己や仲間の安全を保持したりすることを示している。そのため,用具や施設の安全確認の仕方,段階的な練習の仕方,けがを防止するための留意点などを理解し,取り組めるようにする。
なお,これらの指導に際しては,自主的な学習に取り組めるよう練習中や試合後に話合いなどの機会を設けるなどの工夫をするとともに,指導内容の精選を図ったり,話合いのテーマを明確にするなどして,体を動かす機会を適切に確保することが大切である。
3知識,思考・判断
(3)伝統的な考え方,技の名称や見取り稽古の仕方,体力の高め方,運動観察の方法などを理解し,自己の課題に応じた運動の取り組み方を工夫できるようにする。
○知識
「伝統的な考え方」では,我が国固有の文化である武道を学習することは,これからの国際社会で生きていく上で有意義であることを理解できるようにする。
「技の名称や見取り稽古の仕方」では,武道の各種目で用いられる技の名称があることを理解できるようにする。また,見取り稽古とは,武道特有の練習方法であり,他人の稽古を見て,相手との距離の取り方や相手の隙をついて勢いよく技をしかける機会,技のかけ方や武道特有の気合いなどを学ぶことも有効な方法であることを理解できるようにする。
「体力の高め方」では,武道のパフォーマンスは,体力要素の中でも,柔道では主として瞬発力,筋持久力,巧緻性など,剣道では主として瞬発力,敏捷性,巧緻性など,相撲では主として,瞬発力,巧緻性,柔軟性などに強く影響される。そのため,攻防に必要な技術と関連させた補助運動や部分練習を取り入れ,繰り返したり,継続して行ったりすることで,結果として体力を高めることができることを理解できるようにする。
「運動観察の方法」では,自己の動きや仲間の動き方を分析するには,自己観察や他者観察などの運動観察の方法があることを理解できるようにする。
「〜など」の例には,試合の行い方がある。簡単な試合におけるルール,審判や運営の仕方があることを理解できるようにする。
○思考・判断
「自己の課題に応じた運動の取り組み方を工夫」するとは,運動の行い方や練習の仕方,活動の仕方,健康・安全の確保の仕方,運動の継続の仕方などのこれまで学習した内容を,自己の課題に応じて,学習場面に適用したり,応用したりすることを示している。第3学年では,これまで学習した知識や技能を活用して,自己の課題に応じた運動の取り組み方を工夫することができるようにする。
<例示>
・自己の技能・体力の程度に応じた得意技を見付けること。
・提供された攻防の仕方から,自己に適した攻防の仕方を選ぶこと。
・仲間に対して,技術的な課題や有効な練習方法の選択について指摘すること。
・健康や安全を確保するために,体調に応じて適切な練習方法を選ぶこと。
・ 武道を継続して楽しむための自己に適したかかわり方を見付けること。
柔道の技能の学習段階の例
学年 | 中学校1・2年 | 中学校3年 |
投げ技 | 膝車→支え釣り込み足 | → |
大外刈り→小内刈り | 大内刈り(別方向) | |
体落とし→大腰 | → | |
釣り込み腰 | ||
背負い投げ(別方向) | ||
払い腰 | ||
固め技 | けさ固め | → |
横四方固め | → | |
上四方固め | → | |
技の連絡 | 投げ技→投げ技 | |
投げ技→固め技 | ||
固め技→固め技 |
内容の取扱い
カ「F武道」の(1)の運動については,アからウまでの中から一を選択して履修できるようにすること。なお,地域や学校の実態に応じて,なぎなたなどのその他の武道についても履修させることができること。また,武道場などの確保が難しい場合は指導方法を工夫して行うとともに,学習段階や個人差を踏まえ,段階的な指導を行うなど安全の確保に十分留意すること。
1 武道の領域は,従前,第1学年においては,武道又はダンスから男女とも1領域を選択して履修できるようにすることとしていたことを改め,第1学年及び第2学年においては,すべての生徒に履修させることとした。また,第3学年においては,球技及び武道のまとまりの中から1領域以上を選択して履修できるようにすることとしている。
したがって,指導計画を作成するに当たっては,3年間の見通しをもって決めることが必要である。
2 武道の運動種目は,柔道,剣道又は相撲のうちから1種目を選択して履修できるようにすることとしている。
なお,地域や学校の実態に応じて,なぎなたなどのその他の武道についても履修させることができることとしているが,なぎなたなどを取り上げる場合は,基本動作や基本となる技を身に付けさせるとともに,形を取り入れるなどの工夫をし,効果的,継続的な学習ができるようにすることが大切である。
また,原則として,その他の武道は,示された各運動種目に加えて履修させることとし,地域や学校の特別の事情がある場合には,替えて履修させることもできることとする。
3 武道場などの確保が難しい場合は,他の施設で実施することとなるが,その際は,安全上の配慮を十分に行い,基本動作や基本となる技の習得を中心として指導を行うなど指導方法を工夫することとしている。
また,武道は,相手と直接的に攻防するという運動の特性や,中学校で初めて経験する運動種目であることなどから,各学年ともその種目の習熟を図ることができるよう適切な授業時数を配当し,効果的,継続的な学習ができるようにすることが必要である。また,武道は,段階的な指導を必要とするため,特定の種目を3年間履修できるようにすることが望ましいが,生徒の状況によっては各学年で異なった種目を取り上げることもできるようにする。