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地震電磁気学 (Seismo-Electromagnetics)

地震の直前に数日前に電磁気的な異常が見られるという報告は数十年前から始まり、近年ではこれらが地震予報に使える可能性があることから研究に期待 が高まっています。その現象が、真に前兆現象または先行現象であるか、また常に再現するものなのかなどをさらに研究すすめていく必要があると思われます。

S. Uyeda, M. Kamogawa, and T. Nagao, Electromagnetic signals of Earthquakes, Complexity in Earthquakes, Tsunamis, and Volcanoes, and Forecasting and Early Warning of their Hazards (ed. William H. K. Lee), Series of Encyclopedia of Complexity and System Science (Editor-in-Chief, Robert Meyers), Springer, 2008 (in press).
NEW!

長 尾年恭,鴨川 仁,服部克巳,電磁気学的手法による短期的地震前兆の観測的研究の現状,地震 59,69-85,2006.

観測における因果論

前述のように地震の直前に数日前に電磁気的な異常が見られるという報告は数十年前から始まり、近年ではこれらが地震予報に使える可能性があることか ら研究に期待 が高まっています。しかしながら、現象がいまだ曖昧で多くの科学者の同意を得るにはまだまだ道は険しいところです。ある時、電磁シグナルが発生し、このあ と地震が発生した場合シグナルと地震には関係があると示すのは原理的に不可能です。さらには、大地震はそれほど頻繁には起こらず、人工地震でもこのような 研究には使えません。それほど困難があるのにもかかわらず、多くの研究者が情熱をそそぐのは研究者個人の興味のみならず、医学と同様、社会的意義が高いか らといえるでしょう。それゆえに、社会的意義のこの高い位置づけや手法の観点から、地震電磁気学研究は疫学(Epidemiology)の研究に近いと言 えます。 疫学では、因果推論(Causal Inference)を用いて研究を行っています(ここではこの手法が良いか悪いかという科学哲学的観点は割愛します)。これらの手法や地震や他の地球物 理学的要素を加味し、地震電磁気学の観測がどのような手法で、因果推論を行うのがよいのか研究を行っています。
 

地震に関連する地圏 −大気圏−電離圏結合


地震に関連する地圏 −大気圏−電離圏結合とは

大地震や津波が大気重力波等を通して電離圏まで影響を与えることはよく知られています。。一方、地震時・後のみならず地震前においても電離圏擾乱が見られ るという指摘が80年代ぐらいからされており議論が盛んです。現在は、メカニズムが仮説の段階であること、統計的解析が不十分な場合も多いため現象の存否 については決着がついていません。しかし、近年のいくつかの論文では、統計的に有意なものがあり、さらに研究する必要があります。これらの大気圏・電離圏 擾乱と地震の因果性については、地震による影響のみならず、これら擾乱が他の地震発生要因の副産物として観測されている可能性もあります。

LAI model
(Kamogawa (EOS, 2007)の図2より)

M. Kamogawa, Preseismic Lithosphere-Atmosphere-Ionosphere Coupling, EOS, Vol. 87, Num. 40, 417, 424, Oct. 3, 2006.
M. Kamogawa, Reply to Comment: "On Ionospheric Earthquake Prediction" by C. Rodger and M. Cliverd., EOS, 88, 248, 2007. NEW!

地震に先行する大気圏擾乱

近年、我々は上記の地震電磁気観測における因果推論の手法を用いて判断したところ地震の前には電離圏以外、つまり大気圏にも擾乱があることが存在す ることに気づきました。観測はVHF帯電磁波の伝播異常観測によるものです。

Fujiwara*, and Kamogawa et al., Atmospheric anomalies observed during earthquake occurrences, Geophys. Res. Lett., Vol. 31, L17110, doi:10.1029/2004GL019865, 2004.