教科書・教育課程の比較研究会(第3回)

 東京地区に降った雪としては、24年ぶりの早さということでした。積もった雪の高さも、10pはあったでしょうか。
 その翌日12月10日(火)、第3回の比較研究会を開きました。寒い日が続き、年末でもあり、出席者はどのくらいかと心配していましたが、16人の参加者で充実した研究会となりました。
 今回は、社会科教育学を研究され、とりわけ韓国歴史教育にも詳しい坂井俊樹先生に話題提供していただきました。テーマは、「韓国の歴史教育と日本 −歴史教育・歴史教科書−」。近年の中国並びに韓国の近現代史についての我が国の歴史教科書の扱い、論点にも触れられながら、最近執筆された論稿を手にお話しいただきました。
 そこでは、@韓国の歴史学者や教師の苦悩について触れながら、韓国国内における歴史認識の特徴と日本の植民地支配期の「日帝植民地史観」との関係、A韓国と日本の、それぞれの歴史教育の類似性と、韓国歴史教育での日本の扱い方の特徴、B1987年6月の民主化宣言(軍事政権の終焉)と、日韓市民的連帯活動の活発化、C西独−ポーランドの歴史教科書の共同研究の経験と日韓教科書共同研究との相違性、D韓国での第7次教育課程改訂(小学校は全教科国定、中学校は国史、道徳、国語が国定)と一部教科書並びに副教材の自由化、等について、1時間を過ぎる貴重なレポートでした。先生の篤い思いが、ビンビンと伝わってくるようでした。

 その後、質問や意見交換をして6時15分頃に散会。主な、質疑や意見交換は、次のような内容でした。@日韓教科書共同研究の困難性の理由は?・・・西独−ポーランド教科書の共同研究では、両国の民族・文化的相違点は日韓とのそれよりは遙かに小さい。とりわけ、歴史認識については大きな隔たりが部分的にはあること)、A国定教科書制度の実際についての質疑(国定教科書を使わなくても授業可能性の状況)、B検定教科書が出回り始め、そこでは政府批判が盛られているが使用可能(日本よりも「自由」?)、C副教材の使用に当たっては、校長の裁量によること(校長の権限が大きい)、D教員養成については、小学校教員は師範学校、中(中等)学校教員は大学で養成というように、かなり明確に区分があること、E技能オリンピックでは世界の1・2位を争うほどの技術力がある、F韓国の研究者は国外にでて研究能力・学位をとってくることが多く、それだけ外国(特に米国?)の影響も大きい?、等々でした。

 さらに、その後、東京学芸大学内の先生方が所蔵されている外国教科書・学習指導要領の類のデータベース化等について、打ち合わせをしました。それは、田中喜美先生に代表者になっていただき、進めている連合大学院「広域科学教科教育学研究経費」でのプロジェクトです。その研究・調査作業も急ピッチで進めることとなります。東京学芸大学附属図書館内にある敗戦直後GHQが提供した教育課程文庫の整理についても、視野に入れています。
 この件について、関心のある方は、本センターの三石までご連絡いただけると幸いです。
 今年最後の研究会でしたので、ささやかに国分寺駅そばで「望」年会を6名で行いました。今年度、本当にお世話になりました。2003年もよろしくお願いいたします。(み)