これからの学校教育と教員養成カリキュラム
−新教育課程のもとで教師をどうサポートするか−
日時:2003年1月25日(土) 13:30〜17:30
場所:東京学芸大学・北講義棟 N411教室
参加無料
後援:東京都教育委員会 小金井市教育委員会国分寺市教育委員会 小平市教育委員会
第1部 【シンポジウム】 13:30〜16:10
司会 教員養成カリキュラム開発研究センター長 高城 忠
教員養成カリキュラム開発研究センター教授 池田延行
東京学芸大学長挨拶 岡本靖正
教員養成カリキュラム開発研究センター長挨拶 高城 忠
[シンポジストの提案]
1) 少人数学級を担う教師の力量形成をめざして-犬山の学校改善プラン-
名古屋大学大学院教授 中嶋哲彦
2) 学校と教師のニーズに応える教育・研修プログラムの模索
-宇都宮大学大学院教育学研究科の場合- 宇都宮大学教授 松本 敏
3) 人事考課と連動した研修体系の再構築
東京都教育庁理事・東京都教職員研修センター所長
教員養成カリキュラム開発研究センター客員教授 齋藤尚也
[質疑応答]
(指定討論者) 東京都墨田区立更正小学校教務主任 大森 享
第2部 【特別講演】 16:20〜17:00
タイにおけるカリキュラム改革-学校の試み-
“Curriculum Reform in Thailand: School Level”
教員養成カリキュラム開発研究センター客員教授
チュラロンコン大学準教授 バラポン・ボボンシリ博士(通訳つき)
【概要】
第1部【シンポジウム】
2002年度から実施される新教育課程では、授業内容の厳選、「総合的な学習の時間」の創設とともに、地方分権化のなかでの「特色ある学校づくり」が掲げられている。他方で、「学力向上フロンティアスクール」をはじめとした学力対策事業も始まった。このような背景のもと、地方教育委員会レベルでは、教育施策が多様化しつつある。学校レベルでも、地域や子どもの社会的背景、教師の教育観、教育委員会との関係、学校組織に応じて、多様な教育課程編成や学習指導が試みられている。
このような状況下で、2002年度の教員養成カリキュラム開発研究センターのシンポジウムは、様々な地域・学校におけるカリキュラムの生み出され方と、学校を取り巻く環境要因、および学校を支えるサポートシステムについて、幅広く検討することを目的とした。今回は、教師の研修に焦点をあて、この問題にそれぞれの立場から第一線で関わっておられる三人のシンポジストを招いて開催した。
第一に、名古屋大学大学院教授・犬山市教育委員長職務代理の中嶋哲彦氏には、犬山市ではじまった、教育委員会や教師集団による教育課程の自主編成の動向について、提案していただいた。教育委員会・教師・研究者が協働することによって、教材開発がどのようにすすみ、現場の教師たちがどのように変わりつつあるかについて、事例が報告された。
第二に、宇都宮大学教授の松本敏氏には、大学院での現職教員研修の取り組みについて提案していただいた。いち早く現職研修に取り組んでいる宇都宮大学大学院のカリキュラム開発専攻では、どのような資源やスタッフで、教員研修の取り組みを行っているのかが報告されると同時に、教師の研修ニーズや条件整備にかかわる課題が検討された。
第三に、東京都教育庁理事・東京都教職員研修センター所長の齋藤尚也氏には、東京都の教員研修の取り組みについて提案していただいた。現在、地方分権化のもとで学校評価などの制度変革が進行するとともに、予算配分も重点化する傾向にある。このようななかで、人事考課と連動した研修体系の再構築といった政策動向が報告された。
以上、三人のシンポジストの提案を受けて、墨田区立更正小学校教務主任の大森享氏からは、教師集団が自主的に集まり教材開発に取り組んでいる自身の体験をもとに、実践者の立場からの指定討論があった。その後、フロアを交え、非常に活発な議論がなされた。シンポジストや指定討論者に対する質疑応答だけでなく、研究者・都道府県教育委員会・市区町村教育委員会・学校がいかに協働して、教師の研修の場を構築していけるかについて活発な議論が展開された。
現在進行中の教育改革の成否は、学校を支えるサポートシステムのいかんにかかっていると考える。それなくしては、地方分権化は地域格差や学校格差を拡大する結果だけをもたらす可能性がある。今回のシンポジウムは、教育改革のもとで全体としての教育の質をどう高めていくのか、そのための有効なサポートのあり方について検討する手がかりになった。なお、参加者は、大学内外から、研究者、現場教師、行政関係者、学生など60名強であった。多様な立場の参加者を得ることによって、活発な議論が展開されたことを有難く思う。
第2部【特別講演】
続く特別講演においては、本センター客員教授のバラポン・ボボンシリ博士より、タイにおけるカリキュラム改革と、そのもとでの学校レベルの試みが報告された。これに関しても、フロアーを含めての活発な質疑応答が展開された。
【付記】
なお、シンポジウム及び特別講演の内容は、「東京学芸大学教員養成カリキュラム開発研究センター第3回シンポジウム記録集」として編集中です。ご入用の方は、こちらをご参照ください。後日郵送料実費にてお分けいたします。