珪藻の生活形

  単独性・群体性・浮遊性・付着性

珪藻には単独性の種と、群体性の種があります。共にプランクトン性のものと、付着性のものがある。プランクトン性の珪藻は鞭毛などによって積極的に浮遊しているわけではないので、水を汲んでガラス管の中に静置すると,やがてすべて沈澱してしまいます。海や湖など野外の水塊には水自身の対流、川の水の流入、海流、水上を吹く風などによって絶えずわずかな水の動きが生じています。これによってプランクトン性種は浮遊することができるのですが、珪藻自身が沈みにくい形をしているものも少なくありません。

  浮遊性種の沈まない工夫

プランクトン性の種類には群体を作るものや,長い珪酸質の剛毛 (setae) を持っている種類も多く、それによって沈降速度を抑えています。ツノケイソウ属 (Chaetoceros) などは細胞本体より長い針を持っています。

 ツノケイソウ  バクテリオストゥルム

また,ステファノディスクス属 (Stephanodiscus)では,殻の周縁部にぐるりと並んだ有基突起から粘液性の糸を出し,それによって沈降するのを抑えるのです。

  真の群体と擬群体

群体には被殻がもつ結合針 (linking spine) で隣合った細胞同士が結びついて鎖状の群体を作るもの(真の群体)と、細胞外に放出した寒天状の粘質多糖類によってさまざまな形態の群体を作るもの(擬群体)とがあります。

 オビケイソウ

  結合針による群体形成

結合針は一般に殻面周囲にあり、それによって細胞の殻面同士を接触させて、あるいは殻面同士が向き合う形で若干の隙間を残して分裂軸方向に群体を形成するのです。前者にはオビケイソウ属 (Fragilaria) などが、後者にはスケレトネマ属 (Skeletonema) などが当てはまります。

 プンクタストリアータ   スケレトネマ

分裂を繰り返すたびに鎖状群体は長くなりますが、種類によってはある程度の長さになると結合針を持たない分離殻 (separation valve) を形成し自ら群体の伸長を断ち切ることをします。ハネケイソウ属の Pinnularia macilenta は一風変わった群体を作ります。それは殻の長軸に沿って片側の殻面周辺にのみ結合針を持つので、分裂軸方向ではなく横方向にジグザグした群体を作ります。

 ピヌラリア・マキレンタ

  粘質多糖によるさまざまな群体の形成

粘質多糖類で作られる群体にはさまざまな形のものがあります。ハリケイソウ属 (Synedra) やイチモンジケイソウ属 (Eunotia) の種では粘質多糖のパッドにより叢状群体を作るものがあります。またヌサガタケイソウア属 (Tabellaria) やイタケイソウ属 (Diatoma) の種に見られる「ぬさ」形群体、そしてホシガタケイソウ属 (Asterionella) にみられる星形群体は粘質多糖のパッドで細胞同士が接着しているものです。

 イタケイソウ

タラシオシラ属 (Thalassiosira) の種では殻面にある有基突起 (strutted process) より粘質多糖類の糸を出し、それによって細胞が一直線状につながります。また,リクモフォラ属 (Licmophora) やクチビルケイソウ属 (Cymbella)、クサビケイソウ属 (Gomphonema) の種では粘質多糖類の柄を作り、その先に珪藻細胞が付着します。この柄は細胞分裂により分岐し、しばしば樹状の群体を形成します。

 リクモフォラ  クチビルケイソウ 

さらにベルケレイア属 (Berkeleya)やヒシガタケイソウ属 (Frustulia) のものは粘質多糖類の管を作りその中に細胞が縦列するのです。

 ベルケレイアの群体(肉眼→高倍率)


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