珪藻の核と細胞分裂

  

核は通常,細胞中央に位置します。形は球形の他,腎臓形,円錐形,ドーナツ型など多様です。微分干渉顕微鏡を用いると、核の中には核小体を、また周辺にはしばしばディクチオソームを観察することができます。分裂に先立ち、核が殻の側方や片方の極に移動することがいくつかの種類で知られています。

 

  細胞分裂

1. 細胞分裂前期の始めに核が細胞の中心から殻の側方部すなわち帯面方向へ移動します。

2. その場所で微小管重合中心 (MTOC) に接して極板の前駆体が形成されます。

3. 極板前駆体は伸長しながらその外側に高電子密度の顆粒塊や極胞を所有するようになります。やがて極板前駆体は2分割し2つの極板になりますが,その間に中軸紡錘体が生じます。中軸紡錘体は微小管の集まりで、紡錘形ではなくシリンダー状です。

4. 前中期になると、微小管重合中心は消失します。また中軸紡錘体は、その長さを伸ばしながら核へと近づきます。

5. 極板間にある紡錘体は,その中央部で微小管の密度が高く、極板付近では密度が低くなります。これは半紡錘体といって,片方の極板から紡錘体の半分強の長さ微小管が伸長しており,紡錘体中央部では,両極板から伸長した半紡錘体が重なり領域を形成するためです。核内のクロマチンは対になった染色体として現れ紡錘体へ漸次付着しますが、明瞭な染色体を形作らずに付着する種類も存在します。いずれにせよこれに伴って核膜は消失します。中期になるとクロマチン塊、もしくは染色体が赤道面付近で紡錘体を取り囲むようになります。

 

6. 後期になるとクロマチン塊,もしくは染色体は両極板へと移動します。動原体は認識できず微小管がそれらの中に多数侵入しているのが認められます。

  

7. 紡錘体は長くなります、重なり領域はしだいに短くなります。細胞質分裂の前に両極板は紡錘体から離れますが、娘核の核膜が形成された後も、その外側にとどまります。そして、極板より微小管形成中心が再生されるのです。

8. 細胞質分裂では,細胞膜が細胞中心に向かって陥入し、細い分割溝を作ります。そしてそれが環状に絞り込むように細胞質を分割し、2つの娘細胞が作られます。

 

以上の細胞分裂の様子は透過型電子顕微鏡観察で明らかになったことです。ところが驚くべきことに,ラオターボーン (Rauterborn) はこれと同程度の観察を19世紀末に光学顕微鏡でおこなっていたのです。


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