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令和8年4月より、第18代校長をしております西村德行(にしむらとくゆき)と申します。大学では教職大学院の教育実践創成講座(教科領域指導プログラム/美術・工芸教育サブプログラム)に所属し、美術教育における題材研究及び指導法研究、カリキュラム研究、鑑賞教育研究などに取り組んでおります。どうぞよろしくお願いいたします。
本校は1911年の開校以来、日本の初等教育研究を牽引してきた伝統ある附属小学校です。本校には大きく三つの特色があります。一つ目は「教育実習校」としての役割、二つ目は「教育研究の実験・実証」の場としての役割、そして三つ目は「『生きる力』や『非認知能力』を育む大自然の中での宿泊生活体験」です。
第一の特色は、「教育実習校」であることです。東京学芸大学は、教員養成を主たる目的とする我が国の基幹大学の一つです。なかでも大学構内に位置する本校は、未来の教師を育成する教育実習の場であるとともに、教育実習の在り方を研究する場として重要な役割を担っています。例年9~10月と2月には、大学3・4年生が各学級に数名ずつ配属され、総勢約170名の学生が教育実習を行います。普段接している教員とは異なる、若いお姉さん・お兄さん先生との出会いやふれ合いは、子どもたちにとっても、人との関わりについて新たな気づきや学びを得る貴重な機会となっています。
第二の特色は、「教育研究の実験・実証」の場としての役割です。本校では、教科教育研究を大切にし、日々の授業実践を通した研究に取り組んでいます。そこでは、授業の中で一人一人の子どもがもつ認識や考えなどの「個」を大切にしながら、他者との出会い、対話、協働を通して学びを深めていくことを重視しています。また、日頃の教育研究の成果を広く発信する場として、毎年2月に研究会を開催しています。全国から初等教育に携わる多くの方々をお迎えし、本校の授業や研究の成果を参観していただいています。
第三の特色は、「『生きる力』や『非認知能力』を育む大自然の中での宿泊生活体験」です。第3学年から第6学年まで、豊かな自然環境の中で長期の宿泊体験活動を行っています。山間部での野外活動を中心とする一宇荘生活(林間学校・長野県茅野市)と、大海原での遠泳活動を行う至楽荘生活(臨海学校・千葉県鵜原)がその中心です。3年生から卒業までの4年間で、子どもたちはトータル21泊27日にわたる宿泊生活を経験します。この二つの荘生活は、戦前から今日まで受け継がれてきた長い歴史をもち、本校を象徴する伝統的な教育活動の一つとなっています。山と海という大自然を全身で感じながら、主体的に行動し、仲間と協働して生活する多様な体験を通して、子どもたちは「自然・仲間・自己」への感性や理解を深めていきます。そこには、知・徳・体・情を総合的に育む「生きる力」の形成につながる学びがあります。また、このような豊かな自然体験や協働的な生活経験は、自己調整力や協働性、粘り強さなど、将来の人生を支える「非認知能力」を育む上でも重要な役割を果たすものと考えています。
本校はこれら三つの特色を大切に受け継ぎながら、社会の変化や時代の要請を見据え、常に新たな教育にも挑戦してきました。その一つが、ICT(情報通信技術)の積極的な活用です。授業、学校運営、教育研究のさまざまな場面にICTを取り入れ、生成AIを含めた新たな技術を活用した効果的な授業方法の開発や、校務の効率化にも取り組んでいます。職員会議についても、コロナ禍以降、Microsoft Teamsを活用して実施し、ペーパーレス化や在宅勤務の推進など、これからの学校運営の在り方を模索しています。
また近年、学校教育における重要な課題の一つとなっている「いじめ防止対策」についても、子ども一人一人に丁寧に寄り添いながら、迅速かつ組織的に対応することを基本姿勢としています。本校では、「いじめ防止対策委員会」を中心に、ICTの強みを生かし、Microsoft Teamsのチャット機能等を活用して、事案に関する情報を委員や当該学年の教職員間で迅速に共有しています。必要に応じて附属学校運営部とも連携し、事案の把握から対応まで、組織として速やかに進めることを重視しています。
問題が把握された際には、可能な限り当日、遅くとも翌朝までに関係教職員による協議の場を設け、関係する児童への聞き取りを複数の教職員で行うなど、初動の迅速さを大切にしています。その上で、関係する保護者とも速やかに連絡を取り、事実関係や対応について丁寧に情報共有を図ります。さらに、委員会や当該学年で情報を共有しながら、関係する児童への指導や支援を行い、事案の改善・解決につなげていきます。必要な場面では、附属学校運営部への報告や相談を行い、助言を得ながら対応しています。また、いじめを早期に発見するためには、子どもが困ったときに、担任や保護者だけでなく、他の教職員にも安心して相談できる環境をつくることが重要です。本校では、日頃から子どもたちとの信頼関係を築き、相談しやすい雰囲気を学校全体で醸成することにも努めています。「早期発見、迅速な対応、改善・解決」という一連の流れを大切にし、組織として子どもたちを支えていくことを目指しています。
このように本校では、ICTの活用やいじめ防止対策をはじめ、時代の変化に応じた新たな教育や学校運営に積極的に挑戦する一方で、長い歴史の中で培ってきた教育の本質を大切にしています。この姿勢は、まさに「不易流行」の精神を体現するものといえるでしょう。「不易流行」とは、いつまでも変わらない本質を大切にしながら、その時代に応じた新しいものを柔軟に取り入れていく姿勢を表す言葉です。伝統を守ることは、決して変化を拒むことではありません。むしろ、何を大切に受け継ぎ、何を新たに変えていくのかを問い続けることによって、教育は次の時代へと受け継がれていくのだと考えています。
本校はこれからも、「不易流行」の精神を大切にしながら、伝統の中に新しい風を取り入れ、教育の可能性を拓いていきます。そして、子どもたち一人一人の潜在的な可能性を引き出し、それぞれの個性を発揮しながら、自己を創造し、自己を実現していくことを支えていきたいと考えています。子どもたちが自らの未来を切り拓き、それぞれの場所で輝いていく。その歩みを、学校全体で力強く応援していきます。
