修士課程(99年度修了) 中田 恒介

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研究テーマ

中生代の非海生二枚貝化石を利用した、古環境、古生態などの研究。現在は、非海生二枚貝のうちでも特にシジミガイ類を研究の対象にしています。(は?二枚貝だ?と思った人はここをクリック

過去の研究

卒業研究「岐阜県北西部の手取層群の非海生軟体動物化石群集とその変遷」

 中生代、ジュラ紀から白亜紀にかけて堆積した地層である手取層群について、地質調査と、二枚貝化石にもとづく古環境の推定を行ないました。(卒論の『はじめに』をみる

学会発表「岐阜県庄川上流地域の手取層群の層序と非海生二枚貝化石群集」

 中田、小荒井、松川の連名で、日本地質学会において口頭発表を行ないました。卒論を発展させた内容です。非常に緊張しました。(講演要旨をみる

「岐阜県北部大白川地域の手取層群の層序と非海生軟体動物化石群集」

 学芸大紀要に投稿したもの。筆頭著者は松川先生で、以下、中田・小荒井・椛澤・塩野谷・松井・大久保・青野の連名で書いたものです。卒論の焼き直し。

「手取層群の分布域中央部の層序と堆積環境の変遷-非海生軟体動物化石群集に基づいて-」

松川・中田で、地質学雑誌に投稿したもの。卒論の焼き直しを先生が強化したもの。

学会発表「日本産中生代中後期のcorbiculidsの生息環境について」

中田・松川の名前で、日本古生物学会で行なった発表。いい加減に慣れてきました。

修士論文「日本産中生代corbiculidsの古生態学的研究」

総まくりです。


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卒論「岐阜県北西部の手取層群の非海生軟体動物化石群集とその変遷」より抜粋

1.はじめに

 手取層群は北陸、飛騨地方に分布する上部ジュラ系から下部白亜系の地層であり、多くの層準から多種、多数の非海成軟体動物化石を産出する。手取層群については、これまで多くの研究が行われているが、その多くは堆積構造や、層序区分、対比などを議論した記載分類学的なものであり、古生物学的な研究は多くは為されてこなかった。しかし最近になって、非海成層に産する二枚貝化石に関し幾つかの古生態学的な研究が行われている。それらの例として、まず、Matsukawa & Ido (1993)を挙げることができる。Matsukawa & Ido (1993)は、広く手取層群に産出する非海成二枚貝化石群集を分類し、それらの示す環境を推定した。また、松川・伊藤(1995)は、手取層群の非海成軟体動物化石は、示準化石としてよりも示相化石としてのほうが有用性が高いことを示した。松川他(1996)は、牧戸地域の手取層群中部にあたる大谷山層、大黒谷層について、その堆積環境を非海成二枚貝化石群集を利用して推定した。

 岐阜県北西部の牧戸地域に分布する手取層群は、その最下部から最上部に至る層序が連続している。さらに、海成層の御手洗層が非海成層に挟まれて存在し、非海成層から海成層へ、また、海成層から非海成層への環境の変化にともなう非海生軟体動物化石群集の変遷をみるには適している。非海成軟体動物化石群集は、手取層群の下部にあたる牛丸層と、中部にあたる大谷山層と大黒谷層から産出する。なかでも、大谷山層、大黒谷層の非海成軟体動物化石は保存状態も良く、古生態学的な研究を行うための資料として適する。反面、牛丸層から産出する化石は、総じて保存状態があまり良くないので、その点においては古生態学的な研究を行うのに適しているとはいい難い。しかしながら、堆積環境の変化と軟体動物化石群集の変遷の関係について考える上で、牛丸層の非海成軟体動物化石について検討することは重要である。

 そこで筆者は牧戸地域の手取層群について、牛丸層を中心に調べた。牛丸層の化石は保存がよくないが、二枚貝化石は多産するので化石群集として捉えることができる。したがって、大谷山層、大黒谷層などから産出する保存のよい化石によって得られた非海成二枚貝化石群集についての知見とあわせて考えれば、牛丸層の非海成二枚貝化石群集についても、より高い精度で考察できる。また、非海成軟体動物化石群集を利用した古生物学的な手法によって、堆積学的な情報のみに基づく場合に比べ、より高い分解能で環境の変化を捉えることが可能であることを示した。さらに、大白川地域の手取層群についても調査を加え、牧戸地域とあわせて岐阜県北西部の手取層群の全体像を把握した。(戻る)


発表の際に、要旨として送ったもの

岐阜県庄川上流地域の手取層群の層序と非海生二枚貝化石群集

中田恒介・小荒井千人・松川正樹(東京学芸大学)

 

Nonmarine bivalve assemblages and stratigraphy in the Tetori Group, Gifu Prefecture, Japan

Kousuke NAKADA, Kazuto KOARAI, and Masaki MATSUKAWA (Tokyo Gakugei University)

 

 北陸、飛騨地方に分布する上部ジュラ系から下部白亜系である手取層群は、多くの軟体動物化石を産出する。なかでも、岐阜県北西部の牧戸地域には、下位から牛丸層、御手洗層、大谷山層、大黒谷層、アマゴ谷層、別山谷層までの層序が認められる。これは手取層群の最下部から最上部にほぼ相当する。また、海成の御手洗層を挟んでその上位と下位に非海生層が連続しているので、淡水から汽水への、また汽水から淡水への環境の変化にともなう非海生軟体動物化石群集の変化を考察するのに適している。

 手取層群から産出する非海生二枚貝化石群集は、Matsukawa & Ido (1993)によれば5つに区分され、それぞれの群集が示す環境が推定されている。従って、この群集の層序的産出に注目すれば、この地域の海成性から非海性へ、非海性から海性への環境の変化をとらえることができる。

 そこで、これまで牧戸地域の手取層群の下部から中部より産出する非海生軟体動物化石について研究した結果、

1.牛丸層における、非海生二枚貝化石群集の層序的変化は、淡水から汽水性の環境への変化を示す。これは、上位の海成の御手洗層への海進を示唆する。しかし、非海生二枚貝化石群集の変化は一様ではなく、淡水性から汽水性へ、汽水性から淡水性への小規模な変化が認められ、これは、小規模な環境変化を繰り返しながら海進が進行した解釈できる。

2.大谷山層および大黒谷層における、非海生二枚貝化石群集の層序的変化は汽水から淡水性への環境の変化を示す。これは、大谷山層から大黒谷層への海退を示唆する。しかし非海生二枚貝化石群集の層序的な変化は牛丸層に比べ一様であり、大谷山層から大黒谷層における海退は、牛丸層における海進のような小規模な環境の変化を伴わないと解釈できるため、海進と海退が異なるパターンの変化であるとした(松川ほか,1997)。

 この解釈に基づけば、手取層群では、同様の非海生二枚貝化石群集の解析によって、海進と海退のパターンが認められるはずである。そこで、これまでサンプリングの精度が悪かった牛丸層下部から10層準のバルクサンプルを得て資料を追加すると共に、さらに調査範囲を拡大し、牧戸地域の北西に位置する大白川地域の手取層群中部について研究を行った。

 大白川地域の層序区分に関しては、これまで、2つの異なる意見があった。前田(1961)は、大白川地域の手取層群を下位から飛騨越砂岩頁岩、地獄谷頁岩、カギ谷砂岩、二又谷頁岩層、桑島互層、大クラ礫岩層、赤岩砂岩に区分した。

 一方、岐阜県恐竜化石学術調査団(1993)は、牧戸地域の一部と大白川地域の手取層群を調査し、下位から大倉山累層、地獄谷累層、大谷山累層、大黒谷累層、アマゴ谷累層、別山谷累層に区分した。

 筆者らは、牧戸・大白川両地域における野外調査の結果、これらの地域の岩相は同様であるという結論に至った。したがって、大白川地域にも牧戸地域の層序区分を適用することができ、両地域の層序を下位から牛丸層、御手洗層、大谷山層、大黒谷層、アマゴ谷層、別山谷層に区分した。

 大白川地域に分布する大黒谷層には、非海生軟体動物化石を多産する多くの層準が含まれ、非海生軟体動物化石群集の層序的変化を詳細に捉えることができた。

 庄川上流域の牧戸・大白川両地域の手取層群から産出する非海生軟体動物化石について研究を行った結果、次のようなことがわかった。

 牧戸地域と大白川地域をあわせた地域から産出する非海生軟体動物化石群集の層序的な変化は、Matsukawa & Ido (1993)が5つに区分した非海生二枚貝化石群集に基づけば、牛丸層では淡水から汽水性への環境の変化を、大谷山層から大黒谷層にかけては汽水から淡水性への環境の変化を示す。これは、牛丸層では海進、大谷山層から大黒谷層にかけての層序では海退があったことを示すと解釈できる。また、非海生軟体動物化石群集の示す環境の変化は一様ではなく、汽水から淡水性へ、淡水から汽水性へという小規模な環境の変化の繰り返しを含む。これは、海進および海退の両方に認められ、このような環境の変化が、より低次オーダーの環境の変化を繰り返しながら進行することを示すと解釈できる。(戻る)