ユネスコAPEIDのワークショップ15年から

− 国際機関による事例として −

Experiences in the Past 15 Years Activities of APEID Programme and Future Trends
〜 A Case Study on International Cooperation through International Organizations 〜

篠原 文陽児
SHINOHARA, Fumihiko

東京学芸大学
Tokyo Gakugei University

〔あらまし〕国際機関を通じた教育協力や教育交流の一つとして、1974年2月にバンコクの「ユネスコ・アジア地域事務所」(ROEAC, Regional Office for Education in Asian Countries) で第17回ユネスコ総会(1972年) の承認のもとに発足した「アジア・太平洋地域教育開発計画(アペイド計画)」(APEID, Asia and the Pacific Programme of Educational Innovation for Development) 関連事業(アペイド事業)における教育工学関連領域の協力を推進するため、 1976年に文部省によって設立された「教育工学協同センター連絡協議会」(JCETC, Japan Council of Educational Technology Centres)が日本ユネスコ国内委員会等と共催して実施した同年の第1回目の会合(トレーニング・コース)から1990年第4期第4年次セミナー(第13回東京セミナー) までをとりまとめ、国際協力の在り方のいくつかを提案している。

〔キーワード〕国際協力、ユネスコ、国際機関、アジア・太平洋地域、教育工学


目次
1 はじめに
2 アペイド計画と我が国の参加体制
3 アペイド計画と教育工学関連領域
4 我が国の対応
5 まとめ
参考文献
図1 アペイド参加体制
表1 アペイド各期における主要なテーマ
筆者注 

文章末尾


1 はじめに

近年の国際社会は、 相互依存の度合いを急速に深めており、国際的協調と協力がかつてなかった程強く求められている。このような中で、 国際機関を通じた教育協力や教育交流には、ユネスコやOECD等の行う各種教育事業に対する専門家の派遣、研究協力等、さらに、国連大学に対する本部施設の提供などを考えることができる。特に前者ユネスコには、「アジア・太平洋地域教育開発計画(アペイド計画)」(APEID, Asia and the Pacific Programme of Educational Innovation for Development)関連事業、 及びアジア・太平洋地域高等教育協力事業等があり、ともに南米地域やアフリカ地域からも注目され同様のプログラムが実施され、世界的な評価を得ている。

なお、アペイド計画は、当初、「アジア地域教育開発計画(アペイド計画) 」(APEID, Asian Programme of Educational Innovation for Development)と呼ばれていた。目 次

2 アペイド計画と我が国の参加体制

アペイド計画は、現在ではアジア・太平洋地域のユネスコ加盟国が参加し、バンコクにあるユネスコの「アジア・太平洋地域教育事務所」(PROAP, Principal Regional Office for Asia and the Pacific)内に事務局「アジア・太平洋地域教育開発センター(アセイド)」(ACEID, Asian and the Pacific Centre for Educational Innovation for Development) を置き、1974年2月の発足当初から、教育開発のための諸事業を共同で企画、立案、実施、評価する地域協力事業である。

なお、アペイド事業の実施に当たっては、当初から、平等と自助努力の立場に立つ相互学習、相互援助の原則が強調されている。

図1は、我が国のアペイドへの参加体制である。目 次

3 アペイド計画と教育工学関連領域

アペイド計画は、現在まで第1期(1974〜1977)、第2期(1978 〜1981)、第3期(1982 〜1986) 、第4期(1987 〜1991) に分けられている。

表1は、アペイド計画のこれまでの主要なテーマを各期ごとに示している。目 次

表から分かるように、教育工学関連領域は、第1期当初から重要視されている。

一方、これらの事業計画とは別に、1971年と1972年にはプログラム学習に関する専門家講師団の派遣があり、日本、インド、イギリスから各1名が参加した。そして、この後は地域の専門家の起用が図られ、1984年からは太平洋地域も参加することになった。その結果、プログラムの名称は「アジア・太平洋地域教育開発計画」(APEID, Asia and the Pacific Programme of Educational Innovation for Development) と変更され、今日に至っている。目 次

4 我が国の対応

我が国では、アペイド事業における教育工学関連領域の協力を推進するため、1976年に文部省によって設立された「教育工学協同センター連絡協議会」(JCETC, Japan Council of Educational Technology Centres)が、第1回目の会合(トレーニング・コース)を1976年9月16日から27日まで、日本ユネスコ国内委員会と国際協力事業団(JICA)の共催のもとに、東京、岐阜、京都を主要都市会場にして開催した。そして、この時以来平成2年10月まで、2回のトレーニング・コースと11回のワークショップを含むセミナーを開催している。すなわち、第2回目も、第1回目同様にトレーニング・コースであり、1977年夏から秋に6週間にわたって東京、岐阜、京都で開催された。

1979年、教育工学協同センター連絡協議会は、日本ユネスコ国内委員会の同意を得て、 その開催の目的を「情報の交換と経験の交流及び参加国が共通に直面している当面の課題を討議する」ことに発展させ、実施形態を「トレーニング・コース」から「セミナー/ワークショップ」に変更することを決定し、一連の事業を展開している。

これらの会合を通じてアジア地域の国々の教育工学領域に関連する現状や動向が加盟国と日本国内に紹介されることになり、国際的な教育協力と教育交流が、我が国の教育工学の領域で重要な位置を占めることになったと考えられる。

第2期(1978 〜81) に対応する1979年から81年の間の参加者総数は59人であり、この中に28人の外国人参加者があった。また、第3期(1982 〜86) は126 人の参加者総数であり、外国人参加者は51名であった。

現在は、すでに指摘したように、第4期であるが、1987〜90年の参加者総数は116 人、 このうち外国人参加者は46人である。

特に第4期では、1987年のプログラム開始当初からアセイドとの緊密な連携をとり、 過去の3期にはなかった、5ケ年を通じた統一テーマ「新情報技術の導入と展開の方略」を設定するとともに、各年度の主題とこれを推進する国々を「話題提供国」(Lead Agencies) として定め、参加国内での事前の準備と連絡が早めに可能であるようにしながら、セミナーを実施してきている。また、各セミナーの結果をいっそう実りあるものにするために、 当該の年度内の参加者4〜5名がPROAP に集まりフォローアップ作業をし、これらの成果を取りまとめている。このような試みは今後も継続する必要があると思われる。目 次

5 まとめ

教育工学関連領域、中でも特に今日、新情報技術の利用に関するユネスコ加盟国の日本への期待は大きい。

アペイド計画のみならず、さまざまに展開されている国際協力をいっそう実りあるものにするために、国際機関と非政府機関(NGO, Non Governmental Organization)によるものを問わず、かつ、これまでに参加した多くの国々の人々が、ニューズレターなどの情報交換の場などを通じるなどして、いっそう緊密な連絡をとりながら、教育協力と教育交流に関してさまざまに提出される勧告(recommendations) のうち実行可能なものから実行に移すような新たな体制や共同研究が望まれよう。目 次

参考文献

1)Japanese National Commission for Unesco, Japan Council of Educational Technology Centres, and Principal Regional Office in Asia and the Pacific of Unesco, Final Report of The First Asian and the Pacific Seminar on Educational Technology in Tokyo - The Fourth Programming Cycle of APEID Activities -, Tokyo, Japan, 1987.

2)文部省「文部時報」No.1358、ぎょうせい、平成2年3月.目 次

筆者注:本稿は、1990年9月、日本視聴覚教育学会年次大会シンポジウムで発表されたものをもとに、ホームページ公開用に関連資料をリンクさせている。1999.2筆者記>目 次



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