東京学芸大学ダイバーシティ・インクルージョン推進本部
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Office of Promoting Diversity and Inclusion at Tokyo Gakugei Univ.

ニュース&イベント

第1回ダイバーシティ・インクルージョンフォーラム「インクルーシブ教育は何をもたらすのか~横浜国立大学D&I教育研究実践センターの教育実践を通して考える~」を開催しました

【掲載日】2025.2.10

2025年2月7日(金)横浜国立大学ダイバーシティ戦略推進本部 D&I教育研究実践センター講師 高野陽介先生をお招きし、第1回ダイバーシティ・インクルージョンフォーラム「インクルーシブ教育は何をもたらすのか~横浜国立大学D&I教育研究実践センターの教育実践を通して考える~」を開催しました。

    

参加者70名(学生36名、教職員34名)

    

  • フォーラムの様子(写真左)
  • 高野陽介先生(左)竹鼻本部長(右)(写真右)

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    <報告> 中学時代の事故が原因で自身が重度の肢体不自由者となった高野氏の体験談から講演は始まりました。肢体不自由であるため進学先を探すために苦労し、教育の機会や成績評価を平等に得ることは難しかったという事実をお話されました。  インクルーシブ教育はなぜ必要なのか。それは教育機会の均等を目指すためです。しかし、戦前の日本において身体が不自由な方は教育を受ける対象ではなく医療の対象として扱われていました。1947年の学校教育法公布により盲・聾・養護学校就学義務化が規定され、ようやく教育の機会を得られるようになりました。1979年には養護学校義務制施行により養護学校教育は義務教育となりましたが、一方でこれは分離教育の始まりでもありました。いずれ社会に出なければならないのに、分離された学校に通う児童・生徒たちは尚更キャリア形成の機会に恵まれず、将来について考え努力することが難しい環境にありました。こうした歴史の中で、2014年に日本は国連障害者権利条約を批准したことにより、障害のある人を社会や学校から排除しない方針に舵を切ることとなりました。  インクルーシブ教育の実現に向けては様々な壁が存在します。肢体不自由の方が学校に通うには新しくエレベーターを設置しなければなりませんが、そのような費用も土地もないから受け入れはできない。こうした壁が見えたときに思考を停止するのではなく他に解決策はないか検討するのが合理的配慮です。在籍する教室を1階に移せないか、エレベーターではなく階段昇降機ならば設置できないか。様々な解決策を模索した上で対応が難しければ断るのも致し方ないことです。こうした摩擦の解決策を探っていくことにインクルーシブの価値があると高野氏はお話しされました。  合理的配慮による施設やICT機器の提供は特別扱いに見え、他の児童・生徒から反感を買うことがあるかもしれません。成績の評価についても、肢体不自由である児童・生徒は実技を行うことができません。しかし、レポートなどを書いて提出することで、実技を行った児童・生徒より良い成績を取ってしまうことがあるかもしれません。こうした合理的配慮を必要とする存在と同じ場所で共に学ぶ児童・生徒が成長したときに多様性を歓迎する大人となり共生社会を築いていくこともまた、インクルーシブ教育では期待されているということを、講演を通じて知ることができました。 (文責:ダイバーシティ・インクルージョン推進本部員 田家 和樹)