Fundamental Study on the Implementation of Computer Education Curriculum
in Primary School (2)
篠原 文陽児
SHINOHARA, Fumihiko
東京学芸大学
Tokyo Gakugei University
目次
あらまし
1. 授業実践の概要
2. 結果の概要
3. 課題
参考文献
[あらまし] 本報告は、公立小学校4年生24名を対象にした全15回のコンピュータ教育の内容と方法の開発の一部である。実験的研究の結果、(1)基本的な討論の継続的な想起を周辺機器等の活用で統合させることによって、「他人を思いやり、共同して活動すること」の重要性が、コンピュータを離れても正しいことと理解されること、(2)「デザイン」と「制御」を中核にする内容と方法が今後の小学校におけるコンピュータ教育でも、中学校、高等学校等における情報教育でと同様に、重要であることなどが示唆されている。
[キーワード]カリキュラム開発、情報教育、小学校、マルチメディア、コンピュータ教育
前報告に示したように、第二学期と第三学期のコンピュータ教育の目標は、学校の教育目標と統合化させるため、それぞれ「コンピュータに慣れる〜心の豊かさ〜」及び「コンピュータに親しむ〜問題解決〜」である。具体的には、第二学期には、
ことを通じて、「他人への思いやり」「他人を受け入れる」ことを、第三学期には、
ことによって、多角的・多面的に課題を明らかにし解決の手段を探索しまとめることをそれぞれねらいにし、実践的な研究授業が実施されている。つまり、表題の目標を達成するため、以下のような全15回の内容と方法による学習活動を通じ、コンピュータ等を道具に、高次な学校教育目標とコンピュータ利用の意義を統合化した試みである。それぞれ午前9時20分から午前10時30分の授業時間(通常授業時間と業間を加えた時間)の実施である。
@平成9年9月18日(木) ビデオ「圭子先生のパソコン日記 Part2<複製を禁ず>」(CEC,
1992)視聴と討論
A同9月25日(木)、B同10月2日(木) 制作活動計画表の記述(1)(2)
C同10月16日(木) 制作活動計画表の発表
D同10月23日(木)、E同10月30日(木) マイクロフォンの操作と声の録音(1)(2)
F同11月6日(木)、G同11月13日(木) イメージスキャナーの操作と画像取り込み(1)(2)
H同11月27日(木)、I同12月4日(木) デジタルカメラの操作と写真取り込み(1)(2)
J同12月11日(木) インターネットに触れる
K同12月18日(木)、L平成10年1月22日(木)、
M同1月29日(木) 制作実習(1)(2)(3)
N同2月5日(木) 作品の発表
第一回目のビデオは、副題からも推測されるように、著作権を配慮することが「明示された」テーマである。しかし、映像全体を通じた制作の意図は、子供たちが共同してコンピュータを使った絵を書くこと、相互の生活経験を推測し話し合いを重ね理解し受け入れることなどによって、コンピュータを離れても子供たちの学校内外の活動がいっそう活発化されることである。討論の結果、23名中22名が自分のことばでこの「隠れた」意図を表現できるようになった。
第二回目以降は、児童からの質問の度ごとに「主人公はどうした?」「自分から駆け寄った」、同じく「みんなを集めた」等々、教師がビデオの内容を常に児童に意識化させる交互作用を行いながら、「コンピュータはお互いの考えと行動を理解する道具」と「慣れ、触れ、親しむ」ための手段として、数種の周辺機器を扱い素材集の作成と「作品制作」を行っている。例えば、マイクロフォンによる自分の声の録音と再生の授業では、自分の声がコンピュータに録音され、コンピュータから即座に声がでてくることが、彼らにとっては、これまで他人の作った、あるいは与えられたソフトウェアを使っていただけの状況を脱し、友人に助けられながらも自分がコンピュータに命令を「伝える」「制御する」ことにつながり、大いに興味を喚起し持続させる機会となっている(24名すべてが、声の大きさはともかく、それぞれの班で共同して「自己紹介」を録音することができた)。しかし、スキャナーについては、24名中7名は、それぞれスキャナーのフラット面に適切に図版等資料を置くことができなかった。これは後でA社のソフトウェアによって回転等「編集」ができるため、当初は気にせずコンピュー
タに取り込むような指導・助言が行われ、心的な負担のないような配慮がなされている。ただし、フラット面に資料を「適切に」置けない「神経質な」児童(7名中2名)は、ソフトウェアを使った画像の回転についても「細かな」角度調整には時間がかかる。特に、この7名のうち5名は算数の成績が他の2名に比べてやや劣っていることから、少なくとも、フラット面での調整を注意深く指導・助言ではなく、児童間による斜めの線の活用や図形を斜めに置くレイアウトや「デザイン」がいっそう重要であり楽しみが多いことが児童間の「相互の働きかけ」や「共同」提案となり、効果的であることが示された。
また、ディジタルカメラの操作では、事前調査によりいわゆる使い捨てカメラを24名全員が使った経験があり、被写体の構図の善し悪しなどは別にして、全員が操作することはできる。しかし、カメラをコンピュータに接続し、B社のソフトウェアによって画像をコンピュータに転送することには24名中5名が困難を表明し、グループ内のできる児童に支援を求めている。
最後の「作品発表」で「自分の…がコンピュータに表示されたり、出力されたりすること」(24名中19名)と「私の班の結果(デザイン)を見てください」(6班中5班)など発言によれば、各学習者の学習活動への意欲向上と興味関心の持続がうかがえる。
なお、学校行事による時間調整ため、当初予定していたインターネットによる交流は実施されず、教師による演示のみとなった。しかし、著作権に留意してホームページ上の絵等を自分のコンピュータに取り込むことで、必要な絵を課題に応じて検索し、レイアウト上で、各児童がそれぞれ満足する画面になるような「デザイン」へと導くことで授業を終えている。
Jon Griffin等は、1980年代初めから開始されたイギリスの「MEP基本計画」では、「デザイン技術とコントロール技術(Design
Technology and Control Technology」が教育におけるコンピュータ活用の中核であり、1990年に教育科学省でまとめられた「情報技術の国家カリキュラム(National
Curriculum for information technology)」には、「測定と制御」「モデリング」として結実していると指摘する。これらはコンピュータで「制御」するための「プログラミング」と「モデル」作りという過程を経て、「探求」という重要な概念の情報技術が果たす役割である。
一方、同じくJon Scaife等は、科学技術教育の中でコンピュータの活用を論じた上で、教授・学習の「新しいカリキュラム」について、「過程を重視し」「共同による」などが核心となると指摘している。
各学校の歴史と伝統を重視しつつ、新たなカリキュラム観などによって、コンピュータ等導入と活用が、いっそう具体化される必要がある。
(1)篠原文陽児、1997、公立小学校におけるコンピュータ等の導入と情報教育の展開に関する基礎的研究、日本科学教育学会年会論文集21,143-144.
(2)Griffin, J. et al (eds.), 1995, Computers
in the Primary School, Cassel, 1-6.
(3) Scaife, J. and Wellington, J., 1993, Information Technology in Science
and Technology Education, Open University Press, 99- 103.
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