校長より

校長

校長からの挨拶

「竹早中学校での学び」

東京学芸大学附属
竹早中学校 校長

馬場 哲生

(東京学芸大学教授)

2023年度(令和5年度)より校長を務めております馬場哲生です。
専門は英語教育で、東京学芸大学では教職大学院を中心に、将来英語教員を目指す学生や現職の先生方を対象に授業を行っております。本校では校長として、生徒の皆さんが充実した学校生活を送れるように、教職員とのコミュニケーションを密にして学校経営に努めてまいります。ここでは、竹早中学校で特に生徒の皆さんに身に付けてほしい資質・能力について述べさせていただきます。

情報の真偽を見極める能力

皆さんは、何か知らないことについて調べようと思ったら、何に頼るでしょうか。最初に頼るのはインターネットという人が多いと思います。私自身もそうです。検索エンジンにキーワードを入れれば、すぐに関連するウェブサイトが表示されて、知りたい情報が手に入ります。そして近年は、生成AIを使って「~について教えてください」と頼めば、すぐに答えを出してくれるようになりました。 それでは、AIがなんでも答えてくれるならば、勉強の必要はなくなっていくのでしょうか。答えは「否」です。AI は正しいことも教えてくれますが、平気で嘘をつくこともあります。AIが答えを出したとしても、その中の1つ1つの情報について、誰が言った情報なのか、どこに書かれている情報なのか、信頼できる証拠や説得力のある論拠はあるのかを丹念に調べて、真偽を見極める必要があります。そして、事実であると認定できない場合には、改めて正しい情報を探し出さなければなりません。AIが席巻する時代にこそ、物事の真贋を判断する力、そして真実を探し出す力が欠かせません。 情報の真偽を知ることの重要性は、調べ学習をしたり商品やサービスを紹介する広告を閲覧したりするときだけにとどまりません。とりわけSNSなどを通して得られる情報に対しては、真偽の見極めが肝要です。間違った情報を信じてしまうとき、その人は被害者ですが、その情報を拡散してしまたったら、その人は加害者になります。そして、一度インターネット上に拡散した情報を完全に消すことはほとんど不可能です。そうした事態にならないためにも、生徒の皆さんには、情報の真偽を見極める判断力・態度・習慣を身に付けてほしいと思っています。

好きなことを深く学び、苦手なことに一歩踏み出す姿勢

中学校では、好きなことをより深く学ぶ一方で、苦手なことにも一歩踏み出してみることをお勧めします。 好きなことを深く学ぶことは、将来の職業選択につながることもあります。そうでなくても、生涯の学びや趣味として人生を彩り豊かにしてくれます。一方、苦手意識を持っていることに対しても挑戦してみるとよいでしょう。自ら進んで体験してみることで、その面白さや奥深さが理解でき、場合によっては「好きなこと」「得意なこと」になっていくことさえあります。ただし、「苦手を克服しよう」と考えるとハードルが高くなってしまいますので、まずは心の扉を開いて、一歩足を踏み出してみることです。 学びの中で、失敗したり、挫折したり、遠回りしてしまったりすることもあると思います。でも、人としての道を外さない限り、失敗は人間を賢くし、挫折は人間を強くし、遠回りや寄り道は人生を豊かにしてくれます。立ち止まることにも、その場で足踏みすることにも意味があります。すべての経験が人生の糧になるのだと信じて生きていきましょう。

ともに学ぶ場としての学校

学校はみんなが集まって「ともに学ぶ」場です。その意義はどこにあるでしょうか。書籍、テレビ、ラジオ、そしてインターネットには豊富な教育・学習コンテンツがあり、自分一人でできる勉強もたくさんあります。しかし、ともに学ぶことで、社会生活のルールを身に付け、他者への思いやりを持ち、互いに学び合い、そして切磋琢磨することができます。これらは将来学校を出てから社会人として生きていく上でも、とても大事なことです。 仲間とともに学んでいく中で、ときには葛藤や対立もあるかもしれません。それを乗り越えるには、状況を冷静に分析し、他者への思いやりを持ち、相手の立場に立って考え、的確に判断し、適切に行動することが必要です。そうしたことは、実際に「ともに学ぶ」場でしか得られない経験であり、身につかない能力・習慣です。人権を尊重し、他者を思いやる心をもって、家庭生活や社会生活を営んでいく、その経験を積むことができるのが学校です。

生徒のみなさんが「竹早中学校で充実した学びができた」「竹早中学校に通って良かった!」と心から思えるように、教職員一同、生徒の皆さんの成長と学びを支えていきます。

東京学芸大学附属竹早中学校校長
馬場哲生

次に「学校文化創造」という点では、校則として提示されるものがとても少ないことが特徴的です。これは教師が生徒に信頼をおいているということ、そしてそのことに生徒もよく応えてくれるということです。これを具現化したものとして、三大行事とされる校外学習(5月)、運動会(9~10月)、文化研究発表会(10~11月)を中心とした学校行事があります。それらは生徒主体となって運営されており、学年やクラスの垣根を越えた貴重な学びの場となっています。 部活動については、本校では文武両道を志向しています。都大会に出場するなど活躍する運動部もあるほか、10あまりの多彩な文化部が活動しています。

このような竹早での中学校生活全体の中で、子どもたちは、自ら学びを深める力、課題を解決する力、他者を尊重する姿勢、幅広い視野などを獲得していくのです。

さて、本校は以上のような中等普通教育に加え、教員養成を目的とする国立大学の附属学校として二つの役割を担っています。
第一は教育実習校としての役割で、毎年9月から10月を中心に本校においてたくさんの大学生が教員になるための実習をしています。
第二は教育の理論と実践に関する研究・実証を行う役割です。本校の教員は教育実践者・研究者としても活躍し、学会や本校で開催される公開研究会などでその成果を発表しています。学校としての研究としては、同じ敷地内にある附属幼稚園、小学校との連携で子どもたちの主体性を育む教育を行うことに長年取り組んでおり、その成果は「子どもが輝く-幼小中連携の教育が教えてくれたこと―」と題する書籍として昨年出版されました。関心のある方はぜひ手にとっていただければと思います。
そして近年は、本校の特色でもあり、教育分野でも大きなテーマである多様性(ダイバーシティ)の研究にも取り組んでいます。

創立70周年記念の冊子「2017育み培い」には、最初に申し上げた本校の教育精神や教育目標が、同窓会や教育後援会「創竹会」の協力もいただきながら、学校創立以来脈々と息づいている様が記されています。本校の培ってきた伝統や教育実践研究はこれからの社会にとってますます重要になってくる中で、校長として本校の持つよい点をさらに伸ばすことができるよう努めてまいりたいと思います。

学校経営計画・自己評価・部活動の
方針