2025.12.16
イベント

【国際連携報告】ホーチミン市師範大学体育学部でのワークショップ開催

ベトナムの体育科教育の未来を探るワークショップ

2025年12月3日、東京学芸大学アート・アスレチック教育センター所属 松山直輝 講師が、ベトナム・ホーチミン市教育大学(Ho Chi Minh City University of Education) 体育学部と連携し、体育学部に所属する大学生にワークショップを開催した。

▶︎講演タイトルは「Understanding and Rethinking Vietnamese PE: Perspectives from world PE Trends(世界の体育教育トレンドから見るベトナム体育教育の理解と再考)」。ベトナムの教育訓練省が掲げる国際水準のカリキュラムと、教育現場での実践とのギャップに焦点を当て、その解決策を世界と日本の体育科教育の観点から解説した。写真は、本ワークショップを企画した体育学部の教員と松山氏。

 

ベトナム・体育科教育の課題「カリキュラムと現地指導のギャップ」

松山氏はここ数年、ベトナムの教育カリキュラムについて継続的に研究を行い、そして現地の学校で実践される体育指導を直接視察してきた。その上で、松山氏は現行のベトナム教育訓練省が作成したカリキュラムと学校現場での指導方法との間に、ギャップを感じたという。

▶︎ホーチミン市内の中学校で行われる体育指導を視察時の様子。教育カリキュラムの知識を基に、現場指導の様子を複数校視察した。視察を通じて感じたのは、教育カリキュラムと現場指導とのギャップだった。

ワークショップを通じた「教育カリキュラムと現場の橋渡し」

 ワークショップでは、松山氏が感じた教育カリキュラムと実践指導の間に感じるギャップの解説と、そのギャップを埋めるためのアイディアが共有された。
▶︎ベトナム教育訓練省が2006年と2017年に発表した教育カリキュラムの違いについて解説する松山氏。2006年に発表されたObjective-based Learningは2017年のカリキュラムでCompetency-based Learningへ転換がなされたことを解説した。そして、2025年現在も、2006年のObjective-based Learningを実践している教師が多いとするギャップを指摘。
▶︎ギャップを埋める方法として、松山氏は「ルーブリック評価による明確な学習目標の設定」や「アクティブラーニングの手法を体育教育に取り入れる方法」について具体例を交えながら現地の大学生に紹介する活動を行った。写真は、松山氏が作成したバスケットボールのシュートスキル・ルーブリック表を活用してアクティブ・ラーニングを行う体育学部の学生の様子。

ワークショップ参加者のコメント

▶︎参加者のコメントでは、「理論と実践をつなぐ視点が得られた」「将来教師になったときに活かしたい」との声が寄せられた。特に、教育実習期間中である大学生からは「学校に帰ったら、早速、自身の指導に学んだルーブリック表やアクティブラーニングの教授法を活かしたい」と語った。

松山 直輝 講師のコメント

ベトナムの教育訓練省が作成したカリキュラムは国際的に通用するカリキュラムであると感じます。このカリキュラムを現場の教師が実現していくことで、今後、ベトナムの体育科教育の質は向上していくことと感じます。このような質を向上させていく人材こそ、未来の教師である体育学部の大学生に他なりません。今後も、大学生や現場の教師に対して、ベトナムの体育科教育の質を高めることに貢献していければ幸いです。最後に、本ワークショップを企画くださいましたホーチミン市師範大学 体育学部 学部長 Dr. Ngo Kien Trungに深い感謝を申し上げます。